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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (214 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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2.高齢者のがん薬物療法
Q1

高齢がん患者に対する抗がん薬の使用は、非高齢者と異なるか?
:加齢に伴う生理的な臓器機能低下と抗がん薬使用量・スケジュールに対する影響

A1

年齢のみでは、高齢者に対する薬物投与の変更の指標とはならない。

【 解説 】
各臓器機能が正常であり、重篤な合併症がない場合、ほとんどの抗がん薬は全用量で投与するこ
とができる。しかし、薬剤の毒性が併存疾患と重複する場合や併存症により抗がん薬の感受性が高
まる場合には投与量の変更または薬剤の変更がしばしば必要とされる。
老化は通常、臓器機能の低下を伴い、この根底には加齢に伴う生理的予備能の低下がある。その
ため化学療法などの高度のストレスに曝された場合、各臓器の予備能が少ない高齢者はその代償不
全を起こす危険性が若年者より高い。ただし、年齢と生理学的予備能の低下は個人差が大きく、高
齢者におけるがん薬物療法は、年齢よりむしろ合併症および各臓器機能に焦点を当てるべきである。
肝:肝臓の大きさと肝血流量は老化とともに減少する 1) が、これらの変化そのものによる用量変
更の必要性に関しては十分なエビデンスは無い。がんあるいは併存症に起因する明らかな肝機
能障害時には抗がん薬の用量調整を必要とする 2)。特にタキサン系薬など肝臓によって解毒さ
れる抗がん薬では時に重篤な肝障害を生じる 3)。
腎:腎機能も加齢とともに低下する。高齢者は筋肉量が低下するため、血清クレアチニン値は、
高齢患者の腎機能を正確に反映せず、その評価にはクレアチニンクリアランスを用いるべきで
ある。軽度の腎障害であってもメトトレキサート、シスプラチンなど腎排泄に大きく依存する
薬剤では過剰な毒性を引き起こすことがある 4)。
骨髄:高齢者は、骨髄予備能が減少するため抗がん薬による重度の好中球減少症が若年患者と比
較して増加する 5)6)。高齢者悪性リンパ腫に対する CHOP 療法では G-CSF 製剤の使用が推
奨されている 7)。がん患者において、がんおよび抗がん薬投与による貧血の発生は年齢とと
もに有意に上昇する 8)。非造血器悪性腫瘍患者でのエリスロポエチン製剤の有用性は、限定
的とされる 9)。
心血管:加齢に伴い冠動脈疾患、弁膜症の頻度が増加し、心筋収縮拡張能は低下する 1)。高齢者
びまん性 B 細胞非ホジキンリンパ腫の大規模疫学調査で、ドキソルビシンの投与後の心不全
発症リスクは、若年者に比し 29%増加するとされ 10)、アントラサイクリン系薬やフッ化ピリ
ミジン系薬などの心毒性薬物を高齢者に使用する場合には注意を要する。
神経:末梢神経障害の罹患率は加齢とともに増加するが、シスプラチンやビンクリスチンによる
末梢神経障害が年齢と関係するとされる報告はない 11)。急性骨髄性白血病治療で行われる高
用量シタラビンでは、高齢者で中枢神経毒性が増加する 12)。
骨格筋:筋肉量の低下と筋力低下を伴うサルコペニアはがんおよび高齢者ともに増加する病態で、
生命予後に影響する。サルコペニアを伴うがん患者では抗がん薬による毒性が増強する 13)。
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