参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (203 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html |
出典情報 | がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》 |
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高齢がん患者にはどのような社会経済的特徴があるか?
A2
高齢がん患者のおかれている社会経済的条件は個人差が大きい。とくに問題となるのは経
済的負担と社会的孤立である。
【 解説 】
National Comprehensive Cancer Network (NCCN)による高齢がん患者ガイドライン 1)は 65 歳
以上のがん患者に CGA を行うことを推奨しており、
アセスメント領域には、
身体的機能(ADL/IADL)、
併存疾患、ポリファーマシー、栄養状態、認知機能、心理的状態と並んで、社会経済的問題
(socioeconomic issues)も含まれている。具体的には、貧しい居住条件、介護者の不在または不十分
なソーシャルサポート、低収入、医療へのアクセス問題(移動を含む)、医療保険を持たないことが
挙げられている。
これらの社会経済的条件は高齢がん患者の中でも個人差が大きいが、ここでは経済的負担と社会
的孤立について述べる。
1. 経済的負担
がんの診断や治療によって直接的な医療費に加えて間接的な経費も必要となり、それらの費用は
患者や家族の生活に影響を及ぼす。その負担感は、本人および世帯の収入や、必要となる医療費に
よって個人差が大きい。
代表性のあるサンプルでがん患者の経済的負担を年齢階層(18-64 歳 vs 65 歳以上)別に比較した
研究としては、アメリカの Medical Expenditure Panel Survey Experiences With Cancer survey
がある 2)。経済的困難を経験した割合は若年患者群のほうが高く、物質的困難(28.4% vs 13.5%)
と心理的な困難(31.9% vs 14.7%)に共通していた。
介護者の年齢と経済的負担感を検討した国内の調査
3)では、介護者が
60 歳以下の場合、それ以
上の年齢群と比較して介護者の経済的負担感が強かった。患者本人、介護者ともに、退職者が多い
高齢群よりも就労世代の経済的負担が大きいことが示唆される。
2. 社会的孤立
高齢者は一般的に、退職や、友人や親族らの死、運動機能の低下などの要因によって社会との接
点が少なくなりがちである 4)。社会的孤立は、心血管疾患、感染症、認知機能低下といったがん以外
の身体疾患のリスクや死亡リスクとの関連が認められている
5)。また、がん患者の死亡リスクとの
関連も報告されており、2835 名の乳がん患者(女性)を対象とした研究では、社会的に孤立した女
性の死亡リスクの上昇が認められている 6)。
高齢がん患者の中にはソーシャルサポートを十分得ていない者も存在すると考えられるが、多忙
な臨床現場では項目数の少ない簡便なスクリーニングツールが選択されがちであり、それらにはソ
ーシャルサポート項目が含まれていないことがある。たとえば国内外で広く用いられている G8 は、
栄養状態、身体機能、ポリファーマシー、精神的問題、主観的健康感を質問するものの、ソーシャル
サポートに関連する項目は含んでいない。ソーシャルサポートがスクリーニングツールに含まれて
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