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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (168 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q2

認知症をもつがん患者の治療適応をどのように考えるか?

A2

認知症も、他の老年症候群同様に、予想される生命予後と比較し、がん治療により生命予
後の改善が期待できるか否かで判断する 1)。

【 解説 】
認知症は、
・正常に発達した知的機能が持続的に低下する(知的障害を除く)
・複数の認知機能障害がある
・その結果、日常生活や社会生活に支障を来している
の 3 点を満たし、かつ意識が清明である(せん妄のような意識障害ではない)状態を指す。
認知症は、認知機能障害や関連する症状が進行性に変化する、余命を規定する疾患である。認知
症の代表的な疾患であるアルツハイマー型認知症の場合、診断されたときからの平均的な余命は、
約 4-6 年である。認知症の場合、認知症が直接の死因になることは少なく、多くの場合は、誤嚥を
中心とした感染症を理由として死亡する。そのため、悪性腫瘍ほど生命予後は精密に予測すること
は難しい。しかし、重度の認知症(言語機能が崩れ、コミュニケーションが困難な段階)では、誤嚥
が顕在することも多く、平均的な生命予後は 6 か月から 1 年と見積もられている。
認知症も、他の老年症候群同様に、予想される生命予後と比較し、がん治療により生命予後の改
善が期待できるか否かを参考に、本人の意向を踏まえて決定する 1)。
中等度の認知症では、日常生活動作(ADL)にも障害が生じ、保清(口腔ケアや入浴)や食事の摂取
に障害が生じるほか、アパシーにより身体機能が容易に低下するリスクがある。加えて、入院によ
りせん妄を合併するリスクがある。このような、身体機能・精神機能低下のリスクに対して、家族や
訪問看護等による人的支援や、服薬管理、スマートホンによるスケジュール管理などでどこまでリ
スクをカバーできるかで治療の適応を判断する。
軽度の認知症では、手段的日常生活活動(IADL)は低下し、服薬管理や金銭管理は難しくなってい
る一方、身の回りのことは維持できているため、家族も医療者も認知症にり患していることに気づ
かず、見落とされていることがある。がん治療を開始して、せん妄を発症したり、予測をしていなか
った脱水やアドヒアランスの障害が生じる場合には、認知機能障害を改めて精査する。

文献
1) NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®) Senior Adult Oncology
Ver.2 2017

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