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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (162 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q3

高齢者における内視鏡治療でとくに注意すべきことは何か?

A3

高齢者の内視鏡治療においては、術前に全身状態(特に心肺機能)や内服薬(特に抗
血栓薬)の確認,術中には体位の工夫,誤嚥の防止,モニタリングの徹底とともに鎮
痙薬、鎮静薬、鎮痛薬の使用の可否決定とこれらによる合併症への厳重な管理が求め
られる。

【 解説 】

高齢者は多臓器の機能が低下しており、また複数の基礎疾患を持つことが多い。内視鏡検査、
治療による医療事故調査では 60 歳以上の症例が約 7 割を占め、患者側要因が原因と考えられた
事故のうち約 4 割は高齢である事が関与されたと報告 1)されている。2008 年~2012 年までの
5 年間での第 6 回全国調査調査 2)(参加施設 544 施設 検査総数 17,087,111 件)では、偶発症
は 12548 件(0.073%)に生じ、特に前処置に関連する偶発症は 472 件(0.0028%)であった。
前処置の中でも鎮静、鎮痛剤関連 219 件(46.5%)、腸管洗浄液関連 105 件(22.2%)、抗血
栓薬休薬関連 26 件(5.5%)であった。内視鏡検査に伴う偶発症による死亡例は 220 例であっ
たが、そのうち 70 歳以上は 165 件(75.0%)であった。また 220 例中 167 例は、治療内視鏡
に関連していた。
このため高齢者の内視鏡治療では、鎮痙薬、鎮静薬、鎮痛薬の使用のリスク、抗血栓薬服用
患者に対する対処、治療時の工夫(スコープの選択、体位、モニタリングなど)などに留意す
べきである。高齢者では生理機能が低下しており、弁の石灰化による心臓弁膜症や刺激伝導系
の線維化による不整脈がみられ、心係数は 30 歳台の約 60%に、肝血流は 20 歳台の約 50%に、
腎血流は 30 歳台の約 30%に低下する。以上より、高齢者では、薬物動態の変化による作用の
過不足に注意し、慎重な薬物選択と投与が望まれる。
鎮痙薬を使用する目的としては、治療の妨げとなる過剰な蠕動運動を抑制する事であるが、
「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」では、抗コリン作用を有する薬剤は、口腔乾燥、便
秘などから誤嚥性肺炎の頻度を高め、排尿困難や眼圧上昇、頻脈などの有害事象を生じるため、
可能な限り使用を控える 3)ことが推奨されている。どうしても必要な場合はグルカゴンで代用
することが推奨される。なお上部内視鏡では、高齢者でも安全に使用でき、保険収載されてい
る l-メントールを第 1 選択とすべきである。
鎮静薬、鎮痛薬については、内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン 4)で、内視鏡検
査・治療時において、ベンゾジアゼピン系薬剤により至適な鎮静を得ることが可能であるとさ
れている。国内の全国調査報告 2)では、ミタゾラムの使用頻度が全国的に増えており、ジアゼ
パム、フルニトラゼパム、ペンタゾシン、塩酸ぺチジンが次ぐ。また治療時間の長い手技も増
え、プロポフォール、デクスメデトミジン塩酸塩の使用頻度が増えている。添付文書では、主
な鎮静薬、鎮痛薬は高齢者というだけで、慎重投与に該当する。
いずれの薬剤を選択する場合も偶発症に際して気道確保や気管挿管への移行が可能な状況下
で実施すべきである。最近使用頻度が増えているプロポフォール、デクスメデトミジン塩酸塩
は、患者監視に専念できる医師を配置することが必須であり、またこれらを使用する場合は、
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