参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (50 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html |
出典情報 | がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》 |
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がん周術治療の栄養管理はどうするのか?
A2
術前の栄養評価を行い、低栄養リスクのある患者には早期から栄養介入を行う。
【 解説 】
高齢者のがん周術期では、術前の低栄養の存在が術後合併症の発症や死亡率悪化につながるた
め、術前からの栄養療法によって、このリスクを軽減できる可能性がある。従って、術前に適切な
栄養評価を行い、低栄養リスクのある患者には早期から栄養介入を行う必要がある。
高齢は外科手術のリスク因子の 1 つである 1)。高齢者は若年者に比して糖尿病、高血圧症など
慢性疾患の既往などの合併頻度が高く、加齢に伴う低栄養、身体機能低下と虚弱が併存しているた
めである。特に術前の血糖コントロールが不良な高齢者では、待機的手術の術後合併症の発症が多
く、死亡率も高い。欧州臨床栄養代謝学会 (The European Society for Clinical Nutrition and
Metabolism: ESPEN) では術後強化回復プロトコル (Enhanced Recovery After Surgery Protocol,
ERASⓇ) を提唱しているが 2)、高齢者への ERASⓇプロトコルの有効性と安全性に関するエビデン
スは未だ少ない。年齢を問わず、周術期の蛋白異化の抑制と蛋白合成の促進を実現する栄養療法は
未だ確立されていないが 3)複数の栄養介入のクリニカルパスが検討されている 4)5)。例えば術前
の積極的な栄養介入は、敗血症や術後合併症を減じるが、死亡率の改善は示されていない 6)7)。
従って、高齢者担がん患者の周術期では、術前に高齢者に潜在している加齢に伴う低栄養やサル
コペニア、嚥下障害などの評価と共に、栄養状態を適切に評価し、早期から個別の栄養サポートを
立案してゆく必要がある 1)8)。
文献
1)
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2)
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3)
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