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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (64 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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また FN を起こした場合に重篤化するか否か、具体的には入院での経過観察と経静脈的な抗菌薬
投与を必要とするかリスク分けも重要である。ここで汎用される MASCC スコアにおいても 60 歳
以上が危険因子になっている。
表2

発熱時の低リスクを判定するためのスコアリングシステム(MASCC スコア)

危険因子
病状(次の中から1つ選ぶ)
症状なし
軽度の症状
中等度の症状
低血圧なし
慢性閉塞性肺疾患なし
固形腫瘍または真菌症既往のない血液疾患
脱水なし
発熱時外来
60 歳未満

スコア点数
5
5
3
5
4
4
3
3
2

全てを満たせば 26 点。21 点以上は低リスクでその場合は経口抗菌薬による外来治療も考慮され
る。20 点以下は高リスクで入院での経静脈的抗菌薬治療が推奨される。
従ってがんの診療では高齢者は青壮年者と比べ、感染症の発症に常に注意すべきである。FN の発
熱は腋窩温で 37.5℃以上であるが、体温には個人差があり、特に高齢者では熱が出ない場合もある
ため注意する。病歴と身体診察、検査については高齢者であっても特別な事はない。
治療については基本的な流れは変わらないが、高齢者においては一般に心肺機能や腎機能の低下
があり、抗菌薬や抗真菌薬の用量調節が必要で、併存疾患に対する服薬もありよりきめ細かな調節
が必要になる。具体的には FN の初期治療におけるバンコマイシンやアミノ配糖体の併用、経験的
治療開始 3-4 日後の抗真菌薬の追加におけるリポソームアムホテリシン B、CYP 阻害効果のあるア
ゾール系抗真菌薬などの使用時は注意する。
細菌感染症や真菌感染症の予防の適応は造血幹細胞移植や急性白血病の化学療法など、好中球減
少が 1 週間以上続く場合に推奨されており、低リスク患者においては原則的に必要ない。しかし高
齢者においては個々に上記の危険因子を勘案する必要がある。顆粒球コロニー刺激因子 G-CSF
(Granulocyte-Colony Stimulating Factor)は FN を起こす確率の高いレジメンでの予防投与が可能
である。ガイドラインでは FN の発症頻度が 20%以上と想定される場合に予防を推奨しているが、
高齢者の場合は 10%以上で使用を検討する 1)3)。
FN のなかで敗血症や肺炎は予後不良の場合も見られるが、その多くはがんが治療抵抗性で、好中
球が回復しない症例である。起因菌不明の場合は FN の生命予後は良好であるが、適切に抗菌薬治
療が成されないとがん治療のスケジュールの遅れや dose-intensity の低下を招き、ひいてはがん治
療効果の現弱をきたす。従って高齢者といえども感染症を恐れて治療強度が減弱する事は避ける必
要がある。一方で超高齢者などでは患者の QOL を優先した治療選択が必要となる場合がある事は
言うまでもない。
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