よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (160 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

る。実際に 60 歳以上の高齢者を対象とした研究で、非治癒切除であって経過観察された症例の
無再発生存率や全生存率において治癒切除群と差がなかったという報告 5)もある。
次に早期胃癌に対する ESD の適応基準については、「胃癌治療ガイドライン第 5 版」6)に
おいて絶対適応と適応拡大が定められている。現状では高齢の早期胃癌患者にも非高齢者と同
様に安全に施行できる手技であり、この適応基準が使用される事が多い。しかし重度の併存疾
患などにより早期胃癌が予後を規定しない可能性が高い場合は、治療を行わないという選択肢
もある。早期胃癌の自然史は明らかではないが、自然経過が追跡可能であった早期胃癌 56 例の
報告では、早期胃癌を 5 年間非切除で経過観察した場合の累積生存率は 62.8%であった 7)。一
般人口における 85 歳の 5 年生存割合は、男性が 54.6%、女性が 71.1%である事を考慮すると
8)、85

歳以上の男性では早期胃癌を経過観察しても予後規定因子とならない症例が多く存在す

ると推察される。以上より、特に 85 歳以上の高齢者で併存疾患がある患者では ESD の適応を
慎重に判断する必要があり、ESD を行わないことも考慮すべきである。
次に早期大腸癌については大腸 ESD/EMR ガイドライン 9)がその適応や切除標本の病理結
果に基づくアルゴリズムが示されている.リンパ節転移の可能性が極めて低く、病巣が内視鏡
的に一括切除できる大きさと部位であり根治性が期待される病変は原則的に内視鏡治療を行う
べきとしている。早期大腸癌の治療は一括切除が基本であり、高齢者だからといって適応が変
わることはない。他の消化管癌と同じく併存疾患や抗血栓薬服用歴、PS を含め治療対象を検討
する必要がある。特に偶発症が発生した場合では胃と比べて腹膜炎の併発がより危惧され,緊
急手術になるリスクは高くなる。そのリスクについても十分なインフォームドコンセントを行
い、呼吸循環機能を含めた臓器機能低下の有無についても詳細な術前評価が必要である。
これら全ての消化管癌に当てはまることであるが,近年では胸腔鏡や腹腔鏡を用いた低侵襲
手術も普及している。全身麻酔のリスクはあるものの,確実な全層切除やリンパ節郭清が可能
であり,内視鏡的切除の適応外病変や治療後の遺残および切除標本の病理学的な検索で追加切
除を要すると判定された場合には,余命や外科手術に対する耐術能を判断したうえで、低侵襲
手術も考慮すべきである。

文献
1)

Tokioka S et al: Utility and problems of endoscopic submucosal dissection for early
gastric cancer in elderly patients.J Gastroenterol Hepatol Suppl3 2012:63-69

2)

Hatta W et al: Is radical surgery necessary in all patients who do not meet the curative criteria
for endoscopic submucosal dissection in early gastric cancer? A multi-center retrospective study
in Japan. J Gastroenterol 2017 52:175-184

3)

関口正宇ほか:【早期胃癌 2018】早期胃癌の予後

高齢早期胃癌患者に対する治療の現状と今後の展

望.胃と腸 2018 53:720-725
4)

田邊

聡ほか:特集

高齢者消化管癌の内視鏡治療 2

対する APC 焼灼治療法の位置づけ.臨床消化器内科 32

152

各論(1)食道癌 b.早期食道癌に
2017:661-665