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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (35 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q2

高齢者がん患者の内視鏡検査にあたって、その留意点は?

Q2-1

内視鏡検査にあたって、高齢者の身体的変化に対する留意点は?

A2-1

加齢に伴う呼吸・循環機能の低下に留意し, 救急対応ができる準備をして内視鏡検査を
行うことを強く推奨する。

【解説】
高齢者は若年者と異なり加齢に伴う様々な身体的変化がみられる。内視鏡検査においては、特に
呼吸機能と循環機能の変化に留意する必要がある。加齢による呼吸機能の変化は、①機能的な肺胞
が減少することで起こる残気率増加、②肺活量、1秒量、1秒率、最大呼吸気量の低下、③肺拡散能
の低下などが挙げられ、それらに伴う呼吸機能の予備力低下が認められる。次に循環動態の変化は、
心係数、心拍数、駆出率の低下などがあり、高齢者では低酸素血症や高炭酸ガス血症に対する心拍
数の増加反応や運動負荷時の最大増加反応が減弱しており、ストレスに対する循環系の調節機能は
低下している1 )。日本消化器内視鏡学会「内視鏡実施時の循環動態研究委員会報告」2 ) によると、鎮
静剤を使用した内視鏡検査において、SpO2が90%未満に低下した症例は、65歳以上で51%、65歳
未満で39.9%、血圧低下した症例は、65歳以上で19.2%、65歳未満で16.8%と報告されており、いず
れも65歳以上で多くみられる。 日本消化器内視鏡学会「内視鏡診療における鎮静に関するガイドラ
イン」 3 ) では、鎮静剤を使用した内視鏡検査において呼吸抑制・血圧低下による死亡リスクは
0.000024%と報告されており、高齢者の鎮静について、非高齢者に準じた鎮静薬を投与量に配慮し
て使用し、非高齢者以上に検査中および検査後の慎重な監視が求められると提唱されている。近年、
高齢者に対しても内視鏡検査時に鎮静剤を使用するケースが増えており、呼吸・循環動態のモニタ
リングを行いながら、呼吸抑制に伴いSpO2が低下した場合には速やかに酸素投与を行い、代償性心
拍数増加作用が鈍く、循環血漿量が低下することにより血圧低下を認める場合には適切な輸液管理
を行う必要がある。更に、誤嚥や覚醒遅延、 転倒などへの注意も必要である。特に、ベンゾジアゼ
ピン系薬剤は、過鎮静、認知機能低下、 せん妄、転倒、骨折、運動認知機能低下の危険性が高く、
錘体外路症状、遅発性ジスキネジアなどの有害事象発生リスクも報告されている4 )。一方、内視鏡
検査時は一定の姿勢保持や長時間の臥位の継続が必要であり、血栓・塞栓症のリスクになる。日本
消化器内視鏡学会による消化器内視鏡関連の偶発症に関する第6回全国調査報告(2008年より2012
年の5年間)では、内視鏡検査数17,087,111件のうち、塞栓症は2件 (1件は死亡例)と報告されている5 )。
内視鏡検査・治療を行うに際し、あらかじめ時間がかかると予想される場合には、弾性ストッキン
グの着用や可能な限り体位変換を行う必要がある。また、内視鏡検査時は、 飲食の制限もあるため、
高齢者は脱水になりやすく、血栓・塞栓症のリスク因子になるため、 検査前に十分な水分摂取する
よう指導することも大切である6 )。

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