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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (46 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q3

高齢がん患者でも非高齢がん患者と同等のがん薬物療法は可能か?

A3

高齢者機能評価(Geriatric Assessment;GA)の結果、そして腎機能や肝機能に代表される抗
がん薬の PK/PD(Pharmacokinetics/Pharmacodynamics)に影響を及ぼす臓器機能が良好
と判断される高齢者には非高齢者と同等の薬物療法が可能。しかし、これらの評価で問題
がある患者にはレジメンの変更や投与量の減量を考慮する。

【 解説 】
薬効は、薬物の血液・組織内での変化である薬物動態(PK)と組織レベルでの反応性(PD)で規定さ
れる。PK は、吸収(Absorption)、分布(Distribution)、代謝(Metabolism)、排泄(Excretion)の 4 つ
のステップ(ADME)で規定されるが、全身諸臓器の加齢変化に伴い、それらの過程に影響が及ぶこ
とに留意すべきである。高齢者は加齢に伴い臓器機能は一般に低下する。特に心肺機能と腎機能の
低下が顕著であることに注意を要するが、おしなべて全臓器機能は低下する。すなわち、最大換気
量、腎血漿流量、肺活量、糸球体濾過率、心拍出係数、細胞内水分量、基礎代謝率、神経伝導速度
などの低下が知られている 1)。薬物吸収については、消化管機能は加齢に伴い低下するが、概して
加齢による経口投与製剤の吸収への影響は少ないとされている。薬物分布は、細胞内水分量が減少
するため、水溶性薬物の血中濃度は上昇しやすい。一方、体内脂肪量は増加するため脂溶性薬物は
脂肪組織に蓄積しやすい。低栄養など血清アルブミン値低下の場合は、遊離型薬物濃度が上昇しや
すい。多くの薬物は肝臓で代謝されることが多いが、加齢による肝血流の低下、肝機能の低下によ
り血中濃度が上昇しやすい。薬物排泄は主に腎排泄が多いが、腎血流量は加齢により低下するた
め、血中濃度が上昇する。高齢者では、薬力学的に血中濃度は若年者と同じでも反応性が変化する
場合があるので、注意を要する。高齢者では併存疾患のためにポリファーマシーとなり、薬物相互
作用を来すおそれに注意を要する。このため、上記のように
PK/PD(Pharmacokinetics/Pharmacodynamics)に影響を及ぼす因子、そして高齢者機能評価に基
づく全体的な健康度を考慮して、非高齢者と同等の治療をおこなうか、強度を弱めた治療をおこな
うかを判断する 2)。治療開始後は、効果と有害事象をよりきめ細かくフォローして抗がん薬の投与
量、スケジュールの変更や継続の可否を決定することが重要である。

文献
1)

KOHN RR. Human aging and disease. J Chronic Dis. 1963;16:5-21

2)

日本老年医学会. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015. 東京: メディカルビュー社
2015 年.12-14

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