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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (39 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q2-3

上部消化管内視鏡検査に伴う偶発症に対する対策は?

A2-3

上部消化管内視鏡検査では、鎮痙剤の使用を可能な限り控え、検査中は呼吸・循環モ
ニタリングを行うことを強く推奨する。

【解説】
i) 前処置
上部消化管内視鏡検査前は咽頭麻酔を行う。咽頭麻酔では、キシロカインを使用するため、キシ
ロカインアレルギーの有無を確認する必要がある。高齢者では、咽頭麻酔そのものが誤嚥のリスク
を高めることがあるため、スプレーで咽頭麻酔を行う場合には過剰投与にならないように、慎重に
少量ずつ、噴霧回数も少なめにし、時に無麻酔も考慮する1)。鎮痙剤は、一般的に抗コリン薬である
ブチルスコポラミン臭化物製剤とグルカゴン製剤が使用されている。抗コリン薬は、排尿困難、眼
圧上昇、頻脈などの有害事象を生じ、口腔乾燥・便秘などから誤嚥性肺炎の頻度を高める恐れがあ
るため、高齢者では可能な限り使用を控えることが推奨されている2)。したがって、グルカゴンを代
替で使用するが、上部消化管内視鏡検査においては、安全性の高いl -メントール (ミンクリア®)を第
一選択とすることが望ましい1)。
ii) 検査時
上部消化管内視鏡検査時は、ストレス反応によるストレスホルモン分泌や交感神経興奮が起こり、
検査中の血圧は平均12%、心拍数は平均14%上昇する3 )。特に経口挿入の場合、咽頭部通過時や検査
中の吃逆など患者の苦痛は高度であり、血圧・心拍数の変動が顕著となり、心血管系イベントを起
こす可能性がある1 )。それに比べ、細径内視鏡を用いた経鼻挿入法は、標準内視鏡による経口的挿
入法よりも身体的負担が少なく、検査前後の血圧上昇も少ないと報告されている4)。したがって、高
齢者においては、循環動態の変化を極力抑えるために、細径内視鏡による経鼻挿入法は、負担の少
ない比較的安全な上部消化管内視鏡検査と考えられる。但し、経鼻挿入であるため鼻出血には留意
する必要がある。しかしながら、胃癌などの精査内視鏡検査は、経口内視鏡で検査を行い、鎮痙剤
や鎮静剤を使用することもある。その場合、検査施行中は、患者監視 (血圧測定、パルスオキシメ
ーター、カプノグラフィー、心電図など)による呼吸・循環モニタリングを行う必要があり、唾液誤
嚥のリスクが高い方には、誤嚥性肺炎の合併を回避するため、検査中にむせこみがあった場合、介
助者に速やかに口腔内吸引行うように指示することも必要である1)。また、高齢者は消化管壁が脆弱
であるため、内視鏡操作時の粘膜損傷による出血、裂創、穿孔にも十分注意する必要がある5)。

文献
1) 山本頼正, 西村 誠. どうする?高齢者の内視鏡診療. 第1版. 文光堂 ; 2019
2) 日本老年医学会編: 高齢者の安全な薬物ガイドライン 2015. 日本老年医学会, 2016
3) 渡辺千之, 他. 上部消化管内視鏡検査時における循環動態変化の検討. Gasroenterol Endosc.
1998; 40: 1248-1258
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