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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (68 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q2

凝固異常および血栓症を有する高齢者には提供できる治療と提供できない治療がある
か?がん関連血栓症における留意点は何か?

A2

がんと血栓症には密接な関連がありがん患者の多くは凝固異常を有する。さらに、がん関
連血栓症は高齢がん患者における発症頻度が高い。また、がん関連血栓塞栓症に対する治
療は、血栓塞栓症再発ならびに出血のリスクが高く注意を要する。高齢者がん患者は凝
固・線溶異常に伴う播種性血管内凝固異常症候群を発症することも多く、これらのリスク
を念頭において診療を行うことが重要である。

【 解説 】
がんと血栓には密接な関係があり、凝固異常ならびに血栓形成はがんの進展ならびに転移する機
序に大きく関与している。そこで、がん患者に発症する血栓塞栓症をがん関連血栓症(cancer
associated thrombosis: CAT)としてがん以外の原因で発症する血栓塞栓症と分けて対応する。CAT
は静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)や動脈血栓塞栓症(arterial thromboembolism:
ATE)に加え、播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation: DIC)などの凝
固異常に伴う微小血栓や微小循環障害など幅広い病態を有している 1)。さらに高齢がん患者は CAT
ならびに出血のリスクが高くがん治療を行なう際に病態を十分検討した上でがん治療計画ならびに
治療後のモニタリングを行なう。
がんに合併する血栓症として最も頻度が高い VTE は、がん患者全体の 8%程度、入院症例の約
20%に発症し、非がん患者に比較して 6-7 倍の頻度で認める。その中で、急性肺動脈血栓塞栓症
(pulmonary thromboembolism: PTE)は好発年齢が 60 歳台から 70 歳台である 2)。PTE を合併し
た高齢がん患者は重症化する傾向にあり 30 日間死亡リスクが少なくとも 3.2%以上の中等度リスク
を有する 3)。また、VTE 全体はがん症例において増加傾向が続いており、特に治療関連血栓症が増
加している。殺細胞性抗がん薬においてプラチナ製剤(シスプラチン等)とタキサン系抗がん薬が、
分子標的薬では血管新生阻害薬と免疫調節薬(サリドマイドなど)などが血栓発症の頻度が高く投
与する場合注意が必要である。さらに、がん手術周術期において高齢者は VTE 発症リスクが高く、
周術期予防として術後の早期離床、早期歩行、弾性ストッキングの使用などが推奨されている。VTE
に対する抗凝固療法として我が国では発症後1週間までの初期治療はヘパリン類(未分画ヘパリン・
フォンダパリヌクス)の非経口薬を中心に、病態によって経口薬としてワルファリンカリウム、直
接経口抗凝固薬(DOAC)が投与される。さらに、維持治療期(1週間~3ヵ月間)において経口抗
凝固薬の投与を継続する。3ヵ月以降の延長治療は、がん症例に対してがんが治癒するまで出血な
どのリスクを考慮した上で施行する。しかし、がん症例は VTE 再発率が高い一方で出血リスクは非
がん症例に比べ約6倍であり、長期抗凝固療法は慎重に行なう

3)。抗凝固療法はがん治療と平行し

て施行される場合も多く、凝固異常や血小板減少を伴う場合の投薬は困難な場合がある。特に高齢
がん患者は、摂食状態や全身状態が不安定となることが多く、肝・腎機能が増悪しやすく抗凝固療
法を行う際には適切なモニタリングが重要である。
一方、がん治療に伴う ATE は比較的頻度の低い合併症であった。しかし、発症すると脳梗塞、心
筋梗塞そして末梢動脈閉塞症といった重篤な病態を呈する。特に、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常
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