参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (25 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html |
出典情報 | がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》 |
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Q1
高齢者機能評価は実施すべきか?
A1
身体機能、併存症、抑うつ、認知機能、栄養などの生活機能障害に関連する脆弱性を特
定できる可能性があり、高齢者機能評価を行うことが望ましい。
【 解説 】
一般に、高齢者では、身体機能・臓器機能・認知機能の低下や、併存症による多剤内服、老年症
候群など、生活機能の低下につながる多様な背景を抱えている。
高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)は、病態把握に加え、患
者が有する身体的・精神的・社会的な機能を多角的に評価し包括的な医療を提供する考え方とその
工夫である。具体的な評価項目としては、身体機能、併存症、薬剤、栄養、認知機能、気分、社会
支援、老年症候群(転倒、せん妄、失禁、骨粗鬆症など)などが挙げられる。老年医学において CGA
は確立しているが、がん診療においては普及しておらず、近年その有用性について議論が高まって
いる。老年医学における CGA は各評価項目の脆弱性に対応して必要な治療介入を前提としているの
に対し、がん診療では脆弱性に介入までは十分に行われていない現状がある。このように CGA は評
価と介入がセットになっている概念なので、治療方針の決定などの為に総合的な健康度の評価のみ
をおこなう場合には、Geriatric Assessment (GA)という表現が使われる 1)。
2018 年には米国臨床腫瘍学会(ASCO)から「化学療法を開始する脆弱な高齢がん患者に対して
の実践的な評価法と介入について」のガイドラインが公開された
2)。
「化学療法を開始する
65 才以
上の患者には、日常的には検出されない脆弱性を特定するために GA を使用すべき」とされている。
GA を行うことで、①通常の診療では特定されない問題の把握、②有害転帰の予測、③予後予測に
つながることが期待され、リスクに応じて介入を考慮することが可能である。GA の実施にあたって
は、患者自身の身体的/心理的な負担、医療者側の人的/時間的な負担等が生じるが、本邦では電子端
末などを用いて効率よくデータを収集するシステムが一般化していないため、各施設の実情に応じ
て工夫することが重要である。
文献
1)
Wildiers H et al. International Society of Geriatric Oncology consensus on geriatric
assessment in older patients with cancer. J Clin Oncol.
2014;32:2595-2603
2)
Mohile SG et al. Practical Assessment and Management of Vulnerabilities in Older
Patients Receiving Chemotherapy: ASCO Guideline for Geriatric Oncology.
J Clin Oncol. 2018;36:2326-2347
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