参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (103 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html |
出典情報 | がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》 |
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骨転移と骨の健康
高齢者の骨転移診療について
—総論—
長寿命で多細胞生物のヒトは加齢と共にがんに罹患しやすい宿命にある。カナダの研究者は新規
のがんの罹患者の 70%以上、死亡者の 83%が 60 歳以上の高齢者だと報告した 1)。高齢者の定義は
World Health Organization によると 65 歳以上としている。しかし、地球上にはナイジェリアやナ
ミビアのように平均寿命が 55 歳以下の国もあり、このカットオフは生物学的に意味があるのか不明
である。一般に高齢者のがん治療のエビデンスは乏しい。米国の National Cancer Institute におい
て 1997 年から 2000 年にかけて行われた臨床試験では 65 歳以上の参加者は 32%に過ぎないが、こ
の当時、65 歳以上のがん患者はがん患者全体の 61%を占めた 2)。6割の多数が半分に圧縮されたこ
とになる。このように高齢者が臨床試験から除外される理由には合併症の多さ、有害事象の頻発、
認知力の低下、限られた余命、医療機関へのアクセスの困難、家族支援の欠如、本人の諦観などがあ
る。
では高齢者の骨転移の実情はどうだろうか。脊椎転移の有病率を壮年者と高齢者で比較した研究
では 40−59 歳までの壮年者では有病率は男性 8.17%、女性 9.23%であるのに対して、60−79 歳の高
齢者では男性 33.65%、女性 22.27%と高齢者で 2~3 倍も高い 3)。がん種別では前立腺がん 7.2 倍、
乳がん 1.7 倍、肺がん(男)4.9 倍、肺がん(女)4.2 倍と圧倒的に高齢者に多い 3)。2015 年に日本
臨床腫瘍学会(JSMO)が発刊した「骨転移診療ガイドライン」の対象は成人である。しかし、特に
高齢者を指向した記述はない。推奨はエビデンスに基づくので高齢者に特化することは難しい。し
かし、本書では高齢者の骨転移診療について、クリニカル・クエスチョン(CQ)方式で考察、検証
を試みる。
「骨転移診療ガイドライン」の CQ のすべてに「高齢者の〜」と冠すれば良いが、それは
膨大な作業となり、まずは侵襲の強い「治療」について CQ を立てた。診断は侵襲性が低く、あえ
て高齢者に特化する必要はないと思われる。CQ は以下の通りである。
Q1
高齢者の骨転移の外科治療は?
Q2 基礎的な ADL の低下している高齢者の骨転移のリハビリで留意すること。
Q3
高齢者の骨修飾薬の投与で留意すべきこと。
Q4
高齢者のホルモン感受性前立腺がんの骨転移治療で留意すべきこと。
高齢の骨転移患者にリハビリテーションを行うことの是非であるが、生命予後や QOL の観点から
是とされる。前立腺癌は高齢男性に多く、前述のように高齢者は壮年者の7倍の有病率があり、こ
れらは深く掘り下げる必要がある。
一方で放射線治療については高齢者に焦点を当てる必要はない。それは放射線治療(外照射)の
重篤な有害事象は年齢とは相関しないこと 4)。80 歳以上でも有害事象なく治療を完遂できること 5)。
骨転移に対する疼痛緩和目的の放射線治療の 18 の臨床試験のメタ解析では年齢を除外基準にした
ものはなく、そのうち 8 つで参加者の平均年齢は 65 歳以上で 6)、放射線治療においては年齢という
ファクターは度外視できる。
「骨転移診療ガイドライン」の外照射に関する推奨は高齢者にも、その
まま適応して良い。ただし、照射方法については 8 Gy の単回照射の方が、計 20 Gy・5 分割などの
多分割照射よりも良いように思われる。ガイドラインでは単回照射と多分割照射の優劣をつけてい
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