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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (76 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q4

高齢者の癌性疼痛のコントロールの仕方は非高齢者と異なるか?

A4

異なる。あらゆる鎮痛薬の投与において少量からの開始が基本である。

【 解説 】
1. 原則
年代ごとの患者における疼痛治療の違いについてのガイドラインや明確なエビデンスは存在せず、
基本的には WHO 方式がん疼痛治療法で行うことに違いはない。日本緩和医療学会のがん疼痛の薬
「高齢者はオピオイドの薬物動態が変化しているため少量から
物療法に関するガイドライン 1)には、
の開始が基本である」と明記されてある。具体的には成人標準開始量の 1/2-2/3 が妥当である。Q13 で指摘しているように、高齢者特有の感覚変化、アセスメント、とくにオピオイドを中心とした薬
物効果に十分に配慮する。さらに高齢者特有の痛みの原因の複雑さ・多元性や合併症の有無にも配
慮した治療戦略を立てる。
2. 高齢者のがん疼痛の戦略
Colloca G らは、高齢者のがん疼痛におけるよりよいアセスメントと治療についてレヴュー2)し
ている。高齢者の痛みはしばしば軽視され、対処されないことがあり、またベストな推奨と現状の
治療にギャップがあるため、高齢者の痛みはしばしば十分に制御されていない。脆弱な高齢者にお
いては、痛みがしばしば複雑で多元的であるため、非高齢者とは治療アプローチが異なる。とくに
認知機能障害がある場合には、痛みを訴えにくかったり、痛みの認識が困難であったりする。高齢
者の疼痛管理には十分なコミュニケーションが不可欠である。患者の行動以上に患者が思っている
ことを理解することが重要である。痛みは、身体機能に悪影響を与え、実存的信念を曲げさせ、不
安を悪化させ、うつ状態にさせ、社会人間関係に干渉し、生活の質を悪化させる。したがって痛み
アセスメントのカギは、理学所見のみならず、身体機能や生活の質に与える影響や目標を評価する
ことである。現時点で高齢者に特異的な評価ツールはない。高齢者は一般的に薬物副作用のリスク
は高いが、合併症の有無、加齢変化、薬物動態を注意深く配慮すれば、鎮痛薬は安全で効果的にな
りうる。
3. 認知機能障害患者のがん疼痛
認知機能障害のある高齢者においては、痛みの訴え、治療が不十分である 2)3)。言語による自己申
告ができない場合、観察や身振り・機嫌などのサインが痛みを見つけるのに重要である。興奮した
行動が痛みの結果ではなく、情動的なものであったり、認知症の錐体外路症状であったりする可能
性も考慮する必要がある。痛みの評価には個人の能力に合ったスケールを選ぶことが基本である。
適正に薬物要求できない認知機能患者において、鎮痛薬の要求時投与は推奨されず、疼痛増強を見
越した計画的投与が推奨される 2)。
Drageset J らは、ナーシングホーム在住の高齢がん患者の痛みの実態、十分でない鎮痛薬処方・
治療の現状についてレヴュー3)している。認知症の有無にかかわらず、多くの高齢のがん患者(3760%)にがん疼痛の存在がある。認知症がある患者は、薬剤処方や治療関与が少ない傾向がある。
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