参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (54 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html |
出典情報 | がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》 |
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緩和的ながん治療をうける高齢者の栄養管理で気を付けることは何か?
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緩和治療期、終末期に分け、食に影響する患者の背景も踏まえて栄養管理を行う。
がん緩和治療期、終末期の定義、時期の分類については、いくつか提唱されているが、それぞれの
時期に応じた栄養管理が必要なことは共通している。
ここでは、根本的治療がなく、少なくとも生命予後が数か月以上と予測される場合を緩和期
(palliative stage)とし、生命予後が1ケ月未満と推測される場合を終末期(terminal stage)とし
て、各期の高齢者の栄養管理について述べる。
1. 進行がんの緩和治療期の栄養管理
・この時期の栄養管理の目的は、悪液質の発生・進行を抑制し、QOL の維持を図ることである。悪
液質がすすめば栄養状態の改善は困難となるため、早期に栄養管理を開始する。
・咀嚼・嚥下機能、骨格筋量・筋力を含めた栄養関連の評価とともに、生活機能面、精神心理面、社
会環境面、認知度についても評価を行う。
・評価を基に、将来のリスクも見据え、各個人に適した栄養管理を患者・家族を含め検討していく。
【 解説 】
栄養状態の低下は患者の QOL を低下させ、生命予後も悪化させる
に栄養障害を伴う体重減少を認める
1)。
進行再発がん患者の多く
2)
。この栄養障害には悪液質が深く関与し、脂肪組織の減少の
有無に関わらず著しい筋組織の減少を特徴としている 3)4)。 さらに、高齢者は、咀嚼・嚥下機能を
含む消化機能や ADL の低下などにより低栄養やサルコペニアに陥りやすく、個人差も大きい。がん
患者の QOL に影響する因子の調査で、体重減少と栄養摂取障害が約半分を占めるという報告があ
り QOL の維持のためにも体重と経口摂取を維持することは重要である
5)6 )。悪液質は前悪液質
(precachexia)、悪液質 (cachexia)、不応性悪液質 (refractory cachexia)の3段階に分類され、不応
性的悪液質では、栄養サポートによる栄養状態の改善は困難であり、生命予後は3ケ月以内とされ
ている
5)。従って予防的介入も含め、早期から栄養管理を開始することが推奨されている。代謝異
常の程度やエネルギー消費量は個体差が大きく、適切な評価に基づいた栄養給与やサポートが必要
である。高齢のがん患者における栄養状態低下の原因として、がんや治療の影響はもちろん、生理
学的な衰えとして、味覚・嗅覚の低下、咀嚼や嚥下の問題、身体活動の低下、さらに、社会的要因、
服用中の薬剤、認知症・うつといった精神心理的要因など、多くのリスクがあげられる 7)。また、併
存疾患、脱水、浮腫など複数の栄養評価指標に影響する要因も多く、栄養障害が見逃されやすい。そ
のため、複数の栄養指標を用いて評価することが推奨され、GNRI (Geriatric nutritional risk index)
や MNA (mini-nutritional assessment) が高齢者用アセスメントツールとして提案されている 1)。
代謝異常を伴わない、または軽度な時期には、エネルギー、たんぱく質の給与量は平常時と同等の
栄養量を設定する。具体的には、間接熱量計を用いて測定した REE や、Harris-Benedict 式で算出
した BEE を基に活動量に応じ推測するか、床上安静 20~25kcal/kg/日、ベッド外活動があれば 25
~30kcal/kg/日で概算する方法が提唱されている 1)。たんぱく質については、高齢者は最低 1g/kg/日
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