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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (212 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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第9章

1.

高齢者の臨床薬理

高齢者の臨床薬理学

Q1

高齢者の薬物動態は非高齢者と同じか?

A1

加齢による生理機能の変化に伴い、高齢者の薬物動態は吸収、分布、代謝、排泄の各過程
において非高齢者と異なる傾向が認められる。

【 解説 】
加齢による生理機能変化とそれに伴う薬物動態の変化を表に示す。高齢者においては①胃内pHの
上昇による経口薬物の吸収率変化、②体脂肪率の増加や体内水分量の低下による分布容積の変化、
③肝体積および肝血流量の減少による肝クリアランスの低下、④腎血流量の減少に伴う糸球体濾過
率(glomerular filtration rate; GFR)の低下による腎クリアランスの低下、といったように吸収、分
布、代謝、排泄の各過程において非高齢者と異なる傾向が認められる。
International Society of Geriatric Oncology(SIOG)は腎機能低下によってAUCが上昇する薬物
を高齢者に投与する前には必ず腎機能のアセスメントを行い1)、腎機能に応じた用量調節を行うこと
を推奨している2)。しかし腎機能に基づく用量調節は高齢者での薬物療法時における基本的対応であ
るもののSIOGの提示している減量指針は高齢者に特化したものではなく腎機能低下者での臨床試
験結果に基づくものである。したがって高齢者における感受性の変化も考慮すると、腎機能低下者
への減量指針の代用が高齢者への最適な対応とは言い難い。したがって薬物動態に基づく減量を行
った後も副作用の重症化等が懸念されることから、注意深い観察が必須となる。
なお腎クリアランスの低下において、腎機能の指標として繁用されている血清クレアチニン値は
患者の筋肉量に影響を受けることから、筋肉が少ない高齢者や女性および低体重者では血清クレア
チニン値が基準値範囲内であっても腎機能が正常とは限らない。したがって高齢者の腎機能評価を
血清クレアチニン値で行ってはならず、Cockcroft-Gault 式3)により算出されるクレアチニンクリ
アランス値もしくは日本腎臓学会による日本人のGFR推算式4)により算出されるGFR値により評価
を行う。

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