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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (159 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q2

高齢者の早期消化管癌に対する内視鏡治療の適応/条件は何か?

A2

内視鏡治療後の QOL は維持されることから、長期予後が期待できる高齢者の早期消
化管癌においては、従来通りの基準で内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行うべき
である。しかし、全身状態が不良な高齢者においては、内視鏡治療を行わずに経過観
察すべきケースもある。

【 解説 】

高齢者の早期消化管癌の内視鏡治療、特に内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は良好な治療成
績が報告されており、有害事象についても非高齢者と比較してほぼ同程度である事が示されて
いる 1)。内視鏡治療後の QOL も維持されることから、長期予後が期待できる高齢者においては
従来通りの基準で ESD を行うべきである。
しかし、現行の内視鏡治療の治癒切除基準は、転移リスク 0 を前提に決定されており、この基
準は余命が限られた高齢者には厳しすぎる可能性がある。また余命や外科手術に対する耐術能
を考慮すると、追加外科手術が過剰医療となる懸念もある。Hatta ら 2)は、従来の適応で胃 ESD
を行い非治癒切除であった症例群の転移リスク(腫瘍径、深達度(SM2orM/SM1)、分化度(分
化型 or 未分化型)、リンパ管浸潤、脈管浸潤、潰瘍瘢痕、垂直断端陽性の有無を層別化し、リ
ンパ管浸潤のみがリスク因子であったことを報告している。転移リスクが低い高齢者において
は、追加外科切除を行わずに無治療で経過観察することがオプションの一つとして考えられて
いる。また、高齢者には治癒切除基準だけでなく、内視鏡治療術前の適応を拡大する考え方も
選択肢の一つとして、今後検討すべきである 3)。また早期消化管癌の中には発育伸展が緩徐で
あること、長期予後の解析においては他病死が圧倒的に多いことを考慮すると、余命が限られ
た高齢者の中には内視鏡治療が予後の改善に寄与しないケースもあると思われる。早期消化管
癌の自然史についてはまだわかっていない点も多いが、全身状態が不良な高齢者においては、
内視鏡治療を行わずに経過観察すべきケースもある。
次に内視鏡治療(ESD)が施行される事が多い早期食道癌、早期胃癌、早期大腸癌、各々
について高齢者の内視鏡治療についての適応/条件について述べたい。
早期食道癌の自然史は明らかではなく無治療経過観察の場合と比較はできないが、高齢者の場
合は食道癌自体が予後規定因子になるかについて十分に検討する必要がある。そのうえで、特
に術前深達度が EP/LPM で周在性が 3/4 以上の広範な食道癌患者については、治療後の狭窄の
リスクや内視鏡治療に高度な技術を要する事から、APC(アルゴンプラズマ凝固)等の ESD 以
外の治療選択肢も考慮されており、4)病変の拡がりや患者背景により治療方針が選択される。
勿論、高度な内視鏡技術を有する施設であれば狭窄予防を講じたうえで内視鏡治療が考慮され
る。高齢者に対して安全に内視鏡治療を行うという観点から、全身麻酔下での治療、糸付きク
リップに代表されるトラクションデバイスの使用など内視鏡手技の工夫、熟練した術者の限定
など治療時間短縮の工夫が必須である。一方、リンパ節転移リスクがある cT1a-MM 以深の症
例は、外科的切除や化学放射線療法が推奨されているが、特に術前診断でリンパ節転移が無い
症例であれば、耐術能の観点や自らの意志から内視鏡による局所切除が選択されるケースもあ
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