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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (165 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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第7章

精神科的治療

Q1

高齢者のせん妄に対して、がん治療医が注意すべき点は何か?

A1-1

発症リスクが高い。

A1-2

せん妄の原因治療を行うとともに環境調整が重要である。

A1-3

加齢に伴う肝・腎機能の低下を考慮して薬剤の用法・用量を決定する。

【 解説 】
がん患者では、その治療経過中にせん妄を認めることがある。特に、高齢者ではせん妄の発症リ
スクが高くなる。そのため、がん治療医は、高齢者のせん妄について適切な知識を持っておく必要
がある。
がん患者にせん妄がみられた際、せん妄の原因に対する治療に並行して、環境調整などの非薬物
治療のほか、症状マネージメントを目的として薬物療法が行われる。以下、薬物療法を中心に述べるが、
高齢者のせん妄に対する薬物療法は副作用が問題となりやすく、その効果には議論の余地も多い 1)。その
ため、非薬物療法がきわめて重要な役割を果たすことについて、冒頭で強調しておきたい。

一般に、高齢者では加齢に伴う肝・腎機能の低下を認めることから、薬剤による有害事象がおこ
りやすい。そのため、高齢者のせん妄に対する薬物治療においては、薬剤選択や開始投与量、増量方
法などについて十分留意する必要がある。
せん妄の薬物治療では抗精神病薬を用いることが多く、高齢者のせん妄においても例外ではない。
本邦において、せん妄に保険適応を有する薬剤はチアプリド一剤のみである。ただし、実際の臨床
現場では、効果や有害事象などの面からクエチアピンやリスペリドン、ハロペリドールなどがよく
用いられている。このような乖離した実情を踏まえて、2011 年に厚生労働省より、
「クエチアピン、
リスペリドン、ハロペリドール、ペロスピロンの 4 剤について、器質性疾患に伴うせん妄・精神運
動興奮状態・易怒性に対する適応外使用を審査上認める」旨の通知が出され、それ以降は比較的使用
しやすくなっている。ただし、適応外使用であることに変わりはないため、これらの薬剤を用いる
際には可能な限り患者および家族に十分説明し、同意を得た上で投与することが望ましい。
がん患者では、その治療経過中に嘔気・嘔吐や嚥下困難などがみられ、薬剤の経口投与が困難と
なることがある。したがって、がん患者のせん妄の薬物治療では、特に注射薬の使い方に習熟して
おく必要がある。せん妄の治療でよく用いられる注射薬として、ハロペリドールが挙げられるが、
「死亡直前の
単剤で有意な鎮静効果が得られないことはしばしば経験される。2017 年に Hui らは、
進行期がん患者の興奮(もしくは焦燥)を有するせん妄に対して、ハロペリドールをベンゾジアゼピン
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