よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (125 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

Q2

高齢者のがん治療に際し、皮膚のケアで気をつけるところは何か?

A2

経静脈的に薬物を投与する際には、穿刺部から薬液が血管外に漏出する可能性があるの
で留意する。また、長期臥床で褥瘡ができやすいため、継続的な観察と十分な保湿を心掛
ける。

【 解説 】
がん薬物療法を高齢者に対して行う際には、真皮の変化に伴う有害事象に留意する必要がある。
とくに、刺激性あるいは壊死性の抗がん薬を経静脈的に投与する場合には血管脆弱性のために薬液
の血管外漏出に注意が必要である

1)。そのため抗がん剤投与中は、医療者が点滴挿入部周囲の観察

を継続的に行うことが重要である。また、一般に高齢者の皮膚ケアで気をつけるものの一つに褥瘡
がある。褥瘡が発生する背景には、加齢に伴い皮膚が脆弱なことに加え、日常生活動作(ADL,
activities of daily living)の低下、低栄養や体重減少など多様な因子がある。さらに、進行がんでは
食思不振や悪液質が現れ、がん薬物療法では口内炎や消化器症状などの有害事象を伴い、しばしば
体重減少を来す。従って、進行がんを煩う高齢者に対して薬物療法を行ったり、手術や放射線療法
を行ったりする際には、褥瘡発生のリスクが複数あることを十分留意する必要がある。特に、最近
では通院治療の機会が増え、病院内で垣間見る患者の ADL は一見すると向上したように見える。し
かし、自宅ではベッド上で過ごし、十分栄養を摂取出来ない場合もある。従って、通院治療で患者に
接する際には褥瘡のリスクがあることを念頭に、日常生活の状態を問診し、特に腰殿部の視診を行
い、皮膚が乾燥することを防ぐことを目的に、十分な保湿を心がける必要がある。また、在宅ケアで
褥瘡の観察研究が行われ、高齢者のがん患者に褥瘡が生じた場合には、非高齢者に比べて治療に難
渋することが示された 2)。
高齢者では循環機能の低下、ADL の低下に伴い、下腿部に浮腫を来たしやすい。血流・リンパ流
のうっ滞から、しばしば蜂窩織炎などの細菌感染症を来すことがある。高齢者に T 細胞リンパ腫を
生じた場合、健常者(非担癌者)に比べて蜂窩織炎を来しやすいことが示されている 3)。 また、ウ
イルス感染症のうち、帯状疱疹などは比較的高齢者に生じる傾向がある。がん薬物療法を高齢者に
対して行うと、薬剤の作用(副作用)により蜂窩織炎を生じたり、帯状疱疹を誘発したりする場合が
ある。高齢者に感染症が生じた場合には、罹病及び治療期間が長くなり、抗菌薬や抗ウイルス薬の
用量に関して制約を伴う場合があるので留意する必要がある。

117