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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (37 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q2-2

内視鏡検査にあたって、定期的に服用している抗血栓薬はどうすればいいのか?

A2-2

抗血栓薬の休薬は、日本消化器内視鏡学会のガイドラインに従うことを強く推奨す
る。

【解説】
高齢者では心血管系疾患の治療に際し、抗血栓薬を服用されている場合が多い。日本消化器内視
鏡学会が2013年9月〜2014年3月に施行した多施設共同前向き観察研究では、消化器内視鏡の対象者
の17.3%が何らかの抗血栓薬を服用しており、最近ではその割合はさらに高くなってきている1 )。
抗血栓薬服用者に対して内視鏡を用いた観血的処置や治療を行う際には、抗血栓薬の薬理作用によ
る消化管出血リスクと抗血栓薬の休薬に伴う血栓・塞栓症リスクに配慮することが必要である。す
なわち、従来は抗血栓薬内服による出血のリスクに重きが置かれていたが、最近では服用休止によ
る血栓・塞栓症のリスクにも十分な配慮が必要とされている。抗血小板薬継続下での内視鏡下生検
の安全性の検討において、抗血小板薬継続下での生検時止血処置件数の割合は、上部消化管10.7%、
下部消化管8.1%と報告されているが、生検後に吐血や黒色便、貧血の増悪などの顕出血の兆候を認
めた症例、 輸血症例は認めなかったと報告されている2)。一方、アスピリンの中止により心血管イ
ベント、脳梗塞が約3倍に増加するとされ、脳梗塞の発症はアスピリンの休薬10日以内が70%を占
める。ワルファリン休薬100回につき1回の割合で血栓・塞栓症が発症するとされ、発症すれば重篤
で予後不良である場合が多い3 )。心原性脳塞栓症のリスクを評価するCHADS2スコアでは75歳以上
は危険因子、心房細動症例の出血リスクを評価するHAS-BLEDスコアでは65歳以上が危険因子とさ
れている。高齢者は血栓・塞栓症リスクと出血性リスクを併せ持っており、両者への配慮が必要で
ある4 )。2012年に日本消化器内視鏡学会が作成した「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイ
ドライン」3 )、 2017年追補版「経口抗凝固薬(DOAC)を含めた抗凝固薬に関する追補2017」5 )では、
通常の内視鏡検査・粘膜生検・出血低危険度処置 (バルーン内視鏡・クリップ等)は, 抗血栓薬休薬
不要で実施可能であり、出血高危険度処置 (内視鏡的粘膜切除術・内視鏡的粘膜下層剥離術等)のみ,
一時的な休薬や他の抗血栓薬 (ヘパリンやアスピリンなど)への変更が必要と定められている。ガイ
ドラインに準じた抗血栓薬の休薬ついては、処方医, 循環器内科や脳神経内科との連携、診療情報
提供は必須である。当院でも十分なインフォームドコンセントのもと、ガイドラインに準じ休薬し、
必要であれば心エコーや頸部血管エコー等を行い、処方医, 循環器内科や脳神経内科へコンサルテ
ーションを行っている。

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