参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (58 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html |
出典情報 | がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》 |
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高齢者に対してコルチコステロイドを使用する時には、血糖値上昇、消化管潰瘍、骨塩量低下、不
眠に注意をする。
糖尿病は高齢者の 10〜15%に存在し、コルチコステロイドは高血糖や自律神経障害による便秘の
リスクを増加させる 5)。高血糖は、脱水、非ケトン性高浸透圧性昏睡、易感染性、骨塩量低下のリス
クになるので、急を要する場合はスライディングスケールによる血糖コントロールを行う。糖尿病
がない高齢者においても、化学療法の治療期間が長い場合にはステロイド糖尿病の発症に注意する。
高齢者はせん妄発症のリスクが高いため、そのリスクである不眠を防ぐ配慮をする。コルチコス
テロイドは不眠の原因になるので、午前中、なるべく朝食後に投与する。
制吐療法としてのコルチコステロイド投与は短期間であるが、治療期間が 4 ヶ月位の間欠的な化
学療法でも約 75%の患者で骨塩量が有意に低下する 7)。したがって、骨粗鬆症のある高齢者では、
骨塩量の評価や定期的なモニタリングが推奨される。
高齢者は鎮痛薬が必要な整形外科疾患を併存していることが多く、NSAIDs を服用していること
が多いため、コルチコステロイド併用による消化管潰瘍の予防に配慮が必要である。
標準制吐療法により前化学療法で全く悪心・嘔吐が発症しなかった例では、遅発期 CINV 予防と
してのコルチコステロイドの減量や中止を考慮する。
4. ドーパミン受容体拮抗薬
錐体外路症状に注意が必要である。特に、抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン系、抗コリン薬を使
用している患者では発症頻度が高い。また、メトクロプラミドやプロクロルペラジンは、てんかん
患者のけいれんのリスクを増加させる 5)。
5. オランザピン
オランザピンは非定型抗精神病薬であるが、化学療法誘発性悪心・嘔吐への有効性が示され、日
本では 2017 年に抗がん薬による悪心に対して保険適用になった。NCCN、ASCO、MASCC の制吐
療法ガイドラインでも高催吐リスク抗がん薬に対する予防薬として推奨されているが、代表的な副
作用である傾眠について、高齢者への投与に対する注意喚起がされている。
薬物動態としては、65 歳以上の高齢者では消失半減期が非高齢者より約 50%延長すること、女
性は男性よりもクリアランスが約 30%低いことを理解し、投与量を個々に検討する。オランザピン
を制吐薬として高齢者(特に 75 歳以上)に使用した場合の安全性は十分には確立されていないた
め、高齢者に投与する場合には十分な観察と、傾眠やふらつきよる転倒に注意しなければならない。
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