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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (98 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q2
A2

高齢がん患者の周術期リハビリテーション治療における留意事項は何か?
フレイルな高齢がん患者では術後合併症の発症率が高いため、術後早期からリハビリテーシ
ョン治療を行うことはもちろん、術前からリハビリテーション治療を行うことも考慮する。

【 解説 】
近年、高齢がん患者の増加、手術手技や術後管理技術の向上に伴い、高齢がん患者に対する積極
的な手術適応が増加している。高齢がん患者では、加齢に伴う身体機能、運動耐容能、呼吸機能の低
下を認めるだけでなく、慢性閉塞性肺疾患、心不全、糖尿病などの併存疾患を有していることが多
く、術前においてすでに「フレイル」に陥っている可能性が高い。Wagner らは、高齢消化器がん患
者の術前の「フレイル」の有無が、術後合併症の発症率や術後の生存期間と関連すると報告してい
る 1)。
また、肺がんや消化器がん等に対する開胸・開腹手術では、無気肺や肺炎などの術後呼吸器合併
症(postoperative pulmonary complications: PPCs)の発症率が 5~30%と報告されており 2)3)、比
較的侵襲が少ないとされている鏡視下食道切除術においても PPCs の発症率は 23.2~28.9%との報
告がある 4)5)。また、開胸・開腹術後の院内死亡の 45.5~55.0%は PPCs が原因であり、PPCs 発症
例では術後入院期間が長期化するなど術後の転帰にも大きな影響を与えることが報告されている

6)。

そのため、できるだけ早期よりリハビリテーション治療を行い、PPCs や術後の臥床に伴う廃用症候
群を予防・改善し、早期退院、早期社会復帰、QOL の向上を目指すことが重要である。
近年、“cancer prehabilitation”が提唱されており、がんの診断後から治療前にリハビリテーショ
ン治療を実施し、身体・精神機能を向上させることで、合併症の予防や生存率の向上、身体・精神機
能の維持・向上、入院期間の短縮や再入院率の低下、医療費の抑制などが期待できると報告されて
いる。Gillis らは、大腸がん手術 4 週前より術後 8 週まで、有酸素運動、筋力トレーニング、リラク
ゼーションや栄養指導などのリハビリテーション治療を行うことで、コントロール群と比較し、術
前および術後 8 週の運動耐容能が有意に向上したと報告している 7)。また、食道がん術前に 7 日以
上の包括的な呼吸リハビリテーション治療(筋力トレーニング、呼吸練習、有酸素運動など)を実施
することで PPCs を抑制できたとの報告もある 8)。以上より、高齢がん患者の外科治療においては、
手術前の「フレイル」の評価とともに、評価結果に基づいた積極的なリハビリテーション治療を行
い、高齢がん患者の身体・精神機能や ADL を向上させることが、治療効果の向上や生命予後の改善
につながると考えられる。

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