提案書05(0802頁~0998頁)医療技術評価・再評価提案書 (169 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html |
出典情報 | 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》 |
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拠・有効性
・FGS以外の疾患に対する有効性(POLARIS研究)
標準的な薬物療法に抵抗性を示し、LDL-Aが適用されたネフローゼ症候群(FGS以外の疾患も含む)を前向きの登録し、その治療反応性を検討した
POLARIS研究によると、治療前後の尿蛋白の変化は、FGS症例では、6.47±2.98 [g/日]→3.26±3.13[g/日]、非FGS症例では、6.13±3.41
[g/日]→3.89±4.01[g/日]とほぼ同等の有意な改善が認められた[Clin Exp Nephrol 2015;19:379-386]。また、2年後の転帰もFGS症例では
28例中12例(2.9%)、非FGS症例では14例中7例(50.0%)で完全寛解または不完全寛解Ⅰ型が達成されており、むしろ非FGS症例の方が良好な予後
が得られていた[Nephron Extra 2015;5:58-66]。
・FGS以外の疾患に対する有効性(前回提案時以降の新規エビデンス)
MN:LDL-Aが施行されたMN症例(11例)と非施行のMN症例(27例)の尿蛋白改善度を比較によりLDL-Aは重度の蛋白尿を呈するMN症例に対してより
有効な治療法であることが示唆された[Ther Apher Dial. 2019; 23: 575-583(参考文献1)]。1990年から2020年まで報告された15報の文献に
おける30例のMN症例のネフローゼ症候群離脱の達成率をPOLARIS研究のFGS症例26例と比較したところ、治療直後ではMN症例 56.7%、FGS症例
65.3%であったが、治療6ヵ月後ではMN症例73.4%、FGS症例 69.2%となりMN症例の方が良好な成績を示した[Ther Apher Dial 2023 in press(参考
文献5)]。腎機能不全のリスクが懸念されたMN3例にLDL-Aを導入したところ、2例で完全寛解、残り1例もNSの改善が認められた[Intern Med
治癒率、死亡率やQOLの改善等の長期予 2012; 51: 2597-2602]。さらにIgG4関連尿細管間質性腎炎に抗ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)関連膜性糸球体腎炎を合併したMN症例[CEN
Case Rep 2020; 9: 395-403]、PLA2R陰性MN症例[J Clin Apher 2019; 34: 495-498]に有効であったことが報告されている。
後等のアウトカム
MCNS:リツキシマブ治療3クール後2ヵ月で再発したMCNS症例へのLDL-A施行で完全寛解が得られた[Ther Apher Dial 2017; 21: 295-296]。
eGFRが30 mL/min/1.73m2未満に低下し、急性腎代替療法が適用されたMCNS症例(2例)に対し、2例とも速やかに利尿が得られ、NSが寛解した
[Int J Nephrol Renovasc Dis. 2020; 13: 157-162(参考文献2)]。2018年までに報告された9報の文献における15例のMCNS症例の治療成績を
まとめると、11例(73%)がネフローゼ症候群からの離脱し、そのうち4例で完全寛解が達成されていた[Nephrology 2018 23; 603-604]。
・腎機能悪化例に対する有効性
血液透析が導入されるほど腎機能が高度に悪化した薬物療法抵抗性NSに対してLDL-Aを適用すると利尿が得られるとともにNSも改善することが報
告されている。これを受けてPOLARIS研究に登録された症例を治療前eGFRが60 mL/min/1.73,m2(以下単位省略)以上、30以上60未満、30未満の3
群に分けてLDL-Aの治療効果を検討したところ、少なくともeGFRが30以上であれば有意な尿蛋白の改善が見られ、30未満であっても改善する傾向
が認められた(P=0.052)[Ther Apher Dial 2022; 26: 220-228(参考文献4)]。腎移植後再発FGS症例(小児)7例に対しLDL-Aを施行したと
ころ、いずれの症例でも蛋白尿の改善が見られ、部分寛解または完全寛解が得られた。7例のうち5例はLDL-A治療開始時のeGFRが60
mL/min/1.73m2以下の腎不全状態であり、最も重篤な症例のeGFRは20.8 mL/min/1.73m2であった[Pediatr Nephrol 2019; 34: 2343-2350(参考文
献3)]
ガイドライン等での位置づけ
④普及性の変化
※下記のように推定した根拠
ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す
る。)
エビデンスの基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2017」によると直近の2014年度、薬剤治療抵抗性であったと考えられる新規発症難治性ネ
フローゼ症候群は年間800例(FSGSは100例)で、適応拡大でFSGS以外の700人が対象となる。現行のLDL-A治療患者数約150人に700人の新規適用例
が加わり850人となる。1人のLDLA平均実施回数は約10回(POLARIS研究で平均9.6回)で年間実施回数は8,500回となる。
年間対象者数の
変化
見直し前の症例数(人)
150
見直し後の症例数(人)
850
年間実施回数の
変化等
見直し前の回数(回)
1,500
見直し後の回数(回)
8,500
⑤医療技術の成熟度
・学会等における位置づけ
・難易度(専門性等)
・施設基準
(技術の専門性
等を踏まえ、必
要と考えられる
要件を、項目毎
に記載するこ
と)
施設の要件
(標榜科、手術件数、検査や手術の体
制等)
人的配置の要件
(医師、看護師等の職種や人数、専門
性や経験年数等)
1)日本腎臓学会「エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2020」(Minds
掲載https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0222/G0001217)
FGSだけでなくMNの治療アルゴリズムに薬物治療抵抗性に対する治療手段の1つとして収載
されている(p.51 図2 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の治療アルゴリズム、p.53 図3
膜性腎症(MN)の治療アルゴリズム)。
2)小児腎臓病学会:「小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020」(Minds 掲
載https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0172/G0001231/)ステロイド抵抗性症候群の追
加治療の1つとして「血漿交換療法やLDL吸着療法(LDL-A)は発症早期の治療が有効であ
る」(p.61)とされ、治療実績や具体的な治療条件等が詳述されている(p.62)。
3)日本アフェレシス学会:「日本アフェレシス学会診療ガイドライン2021」(Minds掲載
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0120/G0001325)薬物治療抵抗性NSの留まらず難
治性NSに対する推奨が得られており「LDL-Aは、脂質異常症の改善以外にも、液性因子の吸
着、サイトカインバランスの改善、細胞内の薬物輸送機構の改善が報告されている。副腎
皮質ステロイド薬及び免疫抑制薬による既存の治療に反応しなかった症例でアフェレシス
により完全寛解または不完全寛解Ⅰ型となり腎予後が改善した報告がされている。」と記
載されている。
LDL-Aは、日本腎臓学会による「エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2020」においてFGSだけでなくMNの治療アルゴリズムに薬
物治療抵抗性に対する治療手段の1つとされている。小児腎臓病学会による「小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020」では、ステロ
イド抵抗性症候群の追加治療の1つとして「血漿交換療法やLDL吸着療法(LDL-A)は発症早期の治療が有効である」とされ、治療実績や具体的な
治療条件等が詳述されている。また、日本アフェレシス学会による「日本アフェレシス学会診療ガイドライン2021」では、薬物治療抵抗性NSの留
まらず、より重篤な難治性NSに対して「LDL-Aは、脂質異常症の改善以外にも、液性因子の吸着、サイトカインバランスの改善、細胞内の薬物輸
送機構の改善が報告されている。副腎皮質ステロイド薬及び免疫抑制薬による既存の治療に反応しなかった症例でアフェレシスにより完全寛解ま
たは不完全寛解Ⅰ型となり腎予後が改善した報告がされている。」としてカテゴリーIII、推奨レベル2Cと位置づけられている。
体外循環治療に必要な設備を有している施設であることが必要であるが、日常的に血液浄化療法を行ってる施設であれば現在でも問題なく治療が
行われているので施設基準を設定するまでの必要性はない。
LDL-A治療に関わる医師、臨床工学技士、看護師は体外循環療法に経験を有し、有害事象発生時の対処法を理解していることが必要である(日本
アフェレシス学会認定血漿浄化専門医、同認定技士が治療に参加することが望ましい)。
日本腎臓学会「エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2020」
その他
(遵守すべきガイドライン等その他の 小児腎臓病学会:「小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020」
日本アフェレシス学会:「日本アフェレシス学会診療ガイドライン2021」
要件)
⑥安全性
・副作用等のリスクの内容と頻度
使用デバイスがリポソーバーの場合、LDL-A療法施行時のアンジオテンシン変換酵素阻害剤の併用は重篤な血圧低下を引き起こすため禁忌であ
る。また、添付文書には[その他の不具合・有害事象]として「3 年間の副作用調査結果:126 例 3538 回の治療において、血圧低下 15 例
(12%)、21 回(0.59%)、胸痛 3 例(2.4%)、4 回(0.11%)、徐脈 1 例(0.8%)、1回(0.03%)であった。体外循環に起因する血圧低下を認める場合が
あるので、降圧薬の服用が必要な患者においては、 本品使用前の服用を控え、 使用後に服用すること。本品使用中は、血圧、脈拍などのバイタ
ルサインや心電図モニターで患者の状態を観察することが望ましい。」予記載されている。プラズマフローの場合、添付文書には不具合・有害事
象として「・患者の症状の異常(頭痛・頭重、貧血、嘔気・嘔吐、気分不良、顔色不良、ほてり、胸痛、腹痛、血圧低下、血圧上昇、激しい咳込
み、呼吸困難、肺水腫の増悪、アナフィラキシー(しびれ、失神、結膜炎)、眼瞼浮腫、心悸亢進・頻脈、徐脈、不整脈、めまい、発熱・悪寒・
灼熱感、異常発汗、知覚異常・味覚異常・臭覚異常、筋痙攣・振戦、耳鳴り、涙腺への異常な刺激、鼻詰まり、蕁麻疹・発疹・痒み等の訴え・兆
候あるいは症状)・分離血漿中に正常域を越える遊離ヘモグロビンが認められた場合(溶血)。」と記載されている。
使用デバイスがカスケードフローECの場合、添付文書には「3.不具合・有害事象」の中に頻度不明として以下の有害事象が記載されている。「精
神・神経系障害(頭痛)、循環器系障害(血圧低下、血圧上昇、潮紅、動悸、頻脈)、呼吸器系障害(胸痛、呼吸困難、胸部不快感、咳嗽)、消
化器系障害(嘔吐、下痢、腹痛)、筋・骨格系障害(筋攣縮、背部痛)、皮膚および皮下組織障害(異常発汗、そう痒痛)、眼障害(眼瞼浮
腫)、感覚器障害(耳鳴、味覚異常、嗅覚異常)、一般・全身障害および投与部位の状態(発熱、悪寒、倦怠感、気分不良、顔色不良)」
LDL-A療法は30年以上の臨床使用実績があり、安全性情報が蓄積されているため、重篤な副作用の発生は基本的に回避されると考えられる。
⑦倫理性・社会的妥当性
(問題点があれば必ず記載)
問題なし
⑧点数等見直し
の場合
見直し前
見直し後
その根拠
4,200
4,200
既承認技術の算定用件の拡大(適応疾患の拡大)であるため、点数の見直しはない。
区分
⑨関連して減点
や削除が可能と
考えられる医療
技術(当該医療
技術を含む)
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