提案書05(0802頁~0998頁)医療技術評価・再評価提案書 (174 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html |
出典情報 | 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》 |
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拠・有効性
腎生検は、腎炎やネフローゼ症候群の進行による末期腎不全への悪化を抑止するための適切な治療のために必要不可欠な検査であるが、同時にリ
スクも大きいため、高い技術と安全性の担保がきわめて重要である。日本腎臓学会でもこの点を考慮して継続的に対応しており、安全な腎生検を
行うため、『腎生検ガイドブック2020』を発行し、学会員に広く周知・教育しており、同ガイドブックに則して腎生検を行うことが推奨されてい
る。腎生検は多くの難病指定腎疾患の確定診断に不可欠な検査であるが、血流の豊富な腎臓より経皮的に生検針を用いて腎組織を採取するため、
腎生検後の出血は不可避である。しかし腎は後腹膜臓器であり、出血後の圧迫止血が困難であり、しばしば腎生検後血腫を生じ、まれに輸血や外
科的治療を要する大出血を合併する。そのため「腎生検ガイドブック」に則して、熟練した腎臓内科医・小児科医と複数の医療スタッフが協力し
て検査を行い、検査後にも合併症リスクを軽減するため、砂嚢と安静などによる止血と慎重な観察を要する。殊に小児においては安全な腎生検の
治癒率、死亡率やQOLの改善等の長期予 ため静脈麻酔を要する場合も多い。日本腎臓学会教育施設での実態調査による実費用40,965円の半分以下である。要求される技術の熟練性を考慮
すれば、表在性の組織の採取に対する技術料2,000点は適正な技術料とは考えにくい。腎生検手技の難易度や出血リスク、チーム医療の必要性よ
後等のアウトカム
り、実費用に見合う4,000点に増点を提案する。IgA腎症などの多くの腎疾患において腎生検は確定診断や治療方針決定に不可欠であり、正しい診
断がなされれば適切な治療を行える。指定難病であるIgA腎症は20年間で約40%が透析や腎移植が必要な末期腎不全に至るが、近年の口蓋扁桃摘
除術とステロイドパルス治療などにより尿異常を寛解させ、腎予後を劇的に改善できる。日本の新規慢性透析治療導入患者原疾患では慢性糸球体
腎炎は激減しており、1995年~2003年には1万人を超えていたが、IgA腎症への積極的な治療などにより、2015年以降は6,600人前後となってい
る。IgA腎症をはじめとする糸球体腎炎の診断には腎生検が必須で有り、腎生検が適切に行われないと、慢性糸球体腎炎による新規透析導入患者
は増加するという深刻な懸念がある。日本の小児慢性腎臓病(CKD)G3-5の患者の多くは先天性腎尿路異常であり、慢性糸球体腎炎によるCKDG3-5
が少ないことが全国調査で示されているが、腎生検が適切に行われなければ、諸外国同様に小児腎不全患者が増加すると予想される。
ガイドライン等での位置づけ
④普及性の変化
※下記のように推定した根拠
年間対象者数の
変化
年間実施回数の
変化等
腎生検はリスクが高い割に診療保険点数が著しく低く、各腎生検施行施設の高額な持ち出しとなっており、腎生検を施行できない施設が増えてき
ている。診療報酬の改善により、必要な症例に腎生検が施行され、適切な治療介入につながる。
見直し前の症例数(人)
20,000
見直し後の症例数(人)
20,000
見直し前の回数(回)
20,000
見直し後の回数(回)
20,000
⑤医療技術の成熟度
・学会等における位置づけ
・難易度(専門性等)
・施設基準
(技術の専門性
等を踏まえ、必
要と考えられる
要件を、項目毎
に記載するこ
と)
日本腎臓学会では腎生検ガイドを発行しており、2020年に改訂した。腎臓は体深部に存在
するため適切な組織採取が困難であり、かつ血流量が多い臓器であるため出血リスクが高
ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す
い。そのため標準的な検査法や生検後の安静、合併症の対策を示し、安全性向上に努めて
る。)
いる。また、IgA腎症などの難病のガイドラインでは腎生検結果に基づいた診断と治療につ
いて記載されている。
腎生検は習熟した腎臓内科医・小児科医が行うため、日本腎臓学会は腎生検ガイドブック2020を発行し、手技などを標準化している。多くの施設
で経験年数10年以上の腎臓内科医・小児科医自身が実施するか、その監督下で腎生検が実施されている。
施設の要件
内科、小児科、泌尿器科、外科のいずれかで腎臓専門医が常勤であること、検査の重篤な合併症発生時のカテーテルによる腎動脈塞栓術あるいは
(標榜科、手術件数、検査や手術の体 緊急手術が行える体制を要する。
制等)
人的配置の要件
経験年数10年以上の腎臓専門医(内科、小児科、泌尿器科、外科のいずれか)が常勤であること。助手を務める経験年数3~5年の医師が常勤でい
(医師、看護師等の職種や人数、専門 ること。看護師による補助を要する。
性や経験年数等)
その他
(遵守すべきガイドライン等その他の 腎生検ガイドブック2020(日本腎臓学会編)
要件)
⑥安全性
・副作用等のリスクの内容と頻度
日本腎臓学会の調査では2015年~2017年に実施された腎生検15289件(開放腎生検225件、鏡視下腎生検38件を含む)中、肉眼的血尿395件
(2.6%)、処置を行った出血性合併症144件(0.9%)、輸血114件(0.7%)、開腹による止血1件、塞栓術による止血25件(0.16%)、膀胱洗浄54件
(0.35%)、死亡1件であった(腎生検ガイド2020より)。
⑦倫理性・社会的妥当性
(問題点があれば必ず記載)
腎生検は腎疾患診断のためのゴールドスタンダードであり、腎臓病診療において欠かすことの出来ない検査であるが、一方で侵襲的な検査である
ため、その実施に当たり十分なインフォームド・コンセントを行う。倫理性・社会的な妥当性については、問題がない。
⑧点数等見直し
の場合
見直し前
見直し後
2,000
4,000
その根拠
現状、各医療施設での持ち出しのため、実費用に見合う4,000点に増点を提案する。
区分
⑨関連して減点
や削除が可能と
考えられる医療
技術(当該医療
技術を含む)
なし
区分をリストから選択
番号
技術名
なし
なし
具体的な内容
該当せず
減(-)
プラスマイナス
⑩予想影響額
予想影響額(円)
15,920,000,000
その根拠
対象患者=20,000 (人)
当該技術に係る医療費:20,000人×40,000円=8億円。見直し前は20,000人X20,000円=4億円。見直しにより4億円の
増加となる。つまり現在の保険点数が低すぎるために医療機関が高額の負担を強いられていることを示している。現在までに腎生検の実施にあた
り低すぎる保険点数の悪影響は認められないが、将来的には悪影響が及ぶ懸念が強い。
全腎生検の約30%がIgA腎症であり、年間6,000人が新たに腎生検でIgA腎症と診断されている。IgA腎症は約20年で40%が透析に至るが、腎生検に
よりIgA腎症が早期診断されば免疫抑制治療等により透析が回避できる可能性が高い。腎生検点数見直しにより生じる保険点数の増額分は、100人
の年間の透析費用に相当し、これは2017年末の維持透析患者数約33万4,505人の0.03%に過ぎない。腎生検が適切に行われず、IgA腎症患者が透析
に至れば、患者のQOLや生命予後の悪化に加え、透析医療費の増加に至る。とくにIgA腎症などの慢性糸球体腎炎による透析患者の生命予後は、糖
尿病腎症などと比べて長く、適切に治療されない場合には40~50歳代など中年期に末期腎不全に至るため、透析医療費は大幅に増加するという深
刻な懸念がある。透析患者は480万円/年/人の医療費が必要である。低すぎる保険点数により、腎生検が適切に行われず慢性糸球体腎炎による透
析導入が以前の1万人/年に戻ったとすると、透析医療費は3,400人×480万円/年/人=163億2,000万円/年となり、見直さないことにより159億
2,000万円増加する。さらにIgA腎症などの慢性糸球体腎炎の透析導入後の生命予後を20年と見積もると、毎年慢性腎炎症候群から透析導入される
3,400人に対し、3,400人×480万円/年/人×20年≒3.2兆円もの透析医療費が増加することとなる。腎生検による早期診断とその後の適切な治療に
より年間わずか3.3名の患者の透析導入を阻止できれば、4億円の増加分は容易に相殺できると予想される。
備考
腎生検によりIgA腎症など難病を含む多くの腎疾患の診断が可能となり、適切な治療を受けうることで、透析や腎移植を要する末期腎不全への進
行を抑制できるため、医療費は減少すると期待される。
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