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提案書05(0802頁~0998頁)医療技術評価・再評価提案書 (52 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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④有効性・効率性
・新規性、効果等について③との比較
・長期予後等のアウトカム

研究結果

⑤ ④の根拠と
なる研究結果等

ホルモン補充療法(HRT)という治療法は以前より存在し、更年期障害に対する有効性は明らかである(参考文献1,2,3)。
従来のホルモン補充療法③との違いは、現在は世界的に有効性を維持しつつ、安全性・有害事象を回避するための追求・工
夫、薬剤の開発が進んだ点である。例えばホルモン補充療法の中心薬剤であるエストロゲン製剤は、従来の合成エストロゲ
ン製剤から天然型と言われるヒトの卵巣が分泌するエストラジオール(17β estradiol)と同一の製剤が主流となり、かつ
卵巣から分泌され生体内に行き渡るのと同様に、経口製剤と異なり肝臓で代謝されない経皮吸収製剤である貼付剤および塗
布するゲル製剤が実用されている。また、子宮のある女性に行うHRTでは子宮内膜癌発症を予防するために黄体ホルモン製
剤を併用することが必須である。現在では黄体ホルモン製剤の種類により有害事象(心血管系疾患リスク、乳癌リスク)を
低減できることが明らかとなってきた。さらに2021年11月に黄体ホルモンにおいてもヒトの卵巣から分泌されるプロゲステ
ロンと同一の天然型の黄体ホルモン製剤が本邦でも承認され使用可能となった。新規製剤の特徴や新規エビデンスを熟知し
これを臨床の場で生かすことにより、従来と異なり安全かつ効率的なHRTが選択でき長期に及ぶ治療が可能となった。これ
は、女性のQOLを長期にわたり向上させうるのみならず、世界と比較しまだ充分とは言えない、女性の社会進出・指導的立
場での活躍、更には喫緊の課題とされるわが国の労働問題の解決への大きな一助となる(添付資料1,2)。

上述の薬剤の種類、用量、投与法、投与ルートによる安全性エビデンスおよびそのレベルとして、低用量の経口エストロゲ
ン製剤では脳卒中が増加しないこと(2a)、経皮エストロゲン製剤では脳卒中が増加しないこと(2a)、経皮エストロゲン
製剤では静脈血栓塞栓症が増加しないこと(2a)が挙げられる。子宮のある女性に行うHRTにおいて、黄体ホルモン製剤を
併用することにより子宮内膜癌発症を予防すること(1b)、その効果は持続的併用投与法でより強いこと(1b)、黄体ホル
モン製剤の種類により乳癌リスクを低減できること(2a)や動脈硬化促進因子を抑制すること(1b)など、新規製剤の特徴
や新規エビデンスを熟知しこれを臨床の場で生かすことにより、より安全で効率的なHRTが可能となっている(参考文献
1,2)。一方で更年期障害の種々の症状に対するエビデンスのあるHRTの効果として、ホットフラッシュ、上半身優位ののぼ
せ・ほてり感(参考文献3)、発汗異常、睡眠障害、腟乾燥感、性交痛、抑うつ症状、記憶力低下、頻尿、関節痛、四肢
痛、皮膚乾燥感が挙げられる(参考文献2)。さらに、女性に多い骨粗鬆症および骨粗鬆症による骨折を予防し、閉経によ
り悪化した脂質代謝および糖代謝の改善効果を示し、大腸がんリスクを低下させるというエビデンスも存在する(参考文献
2)。
1a

ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す
る。)

ガイドライン等での位置づけ

⑥普及性

年間対象患者数(人)
国内年間実施回数(回)

1)産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020、日本産科婦人科
学会/日本産婦人科医会編集・監修、日本産科婦人科学会事務局
発行、2020年4月(Minds掲載あり)
2)ホルモン補充療法(HRT)ガイドライン2017年度版、
日本産科婦人科学会・日本女性医学学会編集/監修、2020年10月
(Minds掲載無し)

300,000
4

※患者数及び実施回数の推定根拠等

日本における更年期障害の罹患率の正確な統計はない。社会医療診療行為別統計令和元年による外来患者総数は、N958:そ
の他の明示された閉経期及び閉経周辺期障害はデータが無く、N959:閉経期及び閉経周辺期障害,詳細不明は0人となって
いる。政府統計ではほとんど受診が認められないが、情報が少なく医療の対象となる疾患であるとの認識が薄く、我慢しな
くてはいけない症状だという呪縛がわが国の女性特有の考え方であり、これを強いている社会背景が存在している。本邦に
おける少人数での検討では、日常生活に支障があり、医療機関において何らかの治療が必要と考えられる更年期障害は30~
50%であり、諸外国と異なり漢方療法など更年期障害に効果的な治療法が普及しているわが国では、ホルモン療法が必要と
される割合は10%未満と推計される。厚生労働省人口動態調査によると2020年での更年期世代(45~59歳)の女性人口は約
1300万人であるが、このうち更年期障害を最も訴える周閉経期女性は300~400万人である。以上より最大に見積もって約30
万人が対象となると考えられる。

⑦医療技術の成熟度
・学会等における位置づけ
・難易度(専門性等)

ホルモン補充療法が更年期医療に登場したのは1940年頃であり、1980年代には更年期障害の治療法として、現在の投与法で
あるエストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤の併用療法の原型が確立した。その後、骨粗鬆症に対する予防と治療効果が明ら
かとなり、HRTは骨粗鬆症に対しても適用が認められた。一方で、付随する有害事象発生に関する研究成績も次々と明らか
にされ、より安全なHRTを遂行するために新規薬剤の開発、投与法の工夫などによりHRTは現在も進化を続けている。諸外国
では閉経後の諸症状・疾患にHRTを考慮することは必須のこととなっており、国際閉経学会ではHRTのリコメンデーションを
更年期・閉経期や内分泌学に関連した7つの国際学会と共同で声明している(4)。
日本産科婦人科学会においては、周産期学、婦人科腫瘍学、不妊・生殖内分泌学と並んで、生涯を通した女性のQOLの向上
と縦断的な女性の健康管理・治療をおこなう女性医学が4本柱となっている。一方で女性の健康における更年期領域の重要
性の認識の歴史は古く、1986年に産婦人科更年期研究会が設立され、1992年に日本更年期医学会へと発展し、2011年より学
会名称を日本女性医学学会に改めた。この女性医学の中で、HRTは最も重要な治療法の一つに位置づけられている。さらに
本邦では、より安全かつ効果的なHRTを行うためのガイドラインが2009年に発刊され2012年および2017年に改訂(2)されてい
る。
安全かつ効率的にHRTを行うためには、HRTガイドラインを遵守した管理・処方を行うことは勿論のこと、婦人科内分泌学お
よび女性の生涯にわたるヘルスケアに精通した専門性が要求される。専門知識を有する医師による有効な処方、有害事象発
生を予防する安全な適応の判断・処方が必須である。日本女性医学学会においては、学会による認定制度が導入されている
と同時に、各種研修会を開催し専門性の高い医師育成のための教育に力を入れている。近年では諸外国でも更年期障害、更
年期以降のヘルスケア、HRTの処方に対する教育の必要性が叫ばれている。この領域の最先進国である米国においても、
「更年期かかわる医療分野でHRTについて適切で充分な知識持ち、HRTを安全に処方するための研修を受けた若い世代の医師
たちが少ない。」と報告している(5)。

・施設基準
(技術の専門性
等を踏まえ、必
要と考えられる
要件を、項目毎
に記載するこ
と)

施設の要件
(標榜科、手術件数、検査や手術の体
制等)

婦人科又は産婦人科を標榜する保険医療機関

人的配置の要件
(医師、看護師等の職種や人数、専門
性や経験年数等)

日本産科婦人科学会認定の産婦人科専門医を有する医師で、かつ更年期医療に5年以上携わった経験のある医師または日本
女性医学学会認定の女性ヘルスケア専門医を有する医師。

その他
(遵守すべきガイドライン等その他の
要件)

日本産科婦人科学会・日本女性医学学会の共同編集による「ホルモン補充療法ガイドライン」

⑧安全性
・副作用等のリスクの内容と頻度

頻度は少ないが発症すると重篤な副作用として静脈血栓症(海外における相対リスクは2.0程度)があるが本邦での発症報
告は極めてまれである。同様に5年間以上の長期投与の場合乳癌リスク(相対リスクは1.5程度)があるが、肥満や飲酒、運
動不足などの生活習慣による乳癌リスクよりも低い。

⑨倫理性・社会的妥当性
(問題点があれば必ず記載)

無し

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