令和4年版 消防白書 (226 ページ)
出典
公開元URL | https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r4/items/r4_all.pdf |
出典情報 | 令和4年版 消防白書(1/23)《総務省 消防庁》 |
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があるため、その経年劣化の状況(健全性)を点検
長周期地震動のピンポイント予測のための地震動増
により確認することが危険物流出事故防止のために
幅特性評価手法(局所的な地震動レベルの予測に関
重要である。しかし、現状のライニングの点検方法
わる部分)の考案に取り組んでいる。
は主に目視等における定性的なものであり、健全性
(イ)令和3年度の主な研究開発成果
を詳細に把握することができない。こうしたことか
令和3年度は、石油タンクサイトに対する経験的
ら、長期間使用された鋼製一重殻地下タンクの内面
長周期地震動予測式の改良版の考案のため、岩盤上
ライニング鋼板の健全性の定量的診断手法の確立を
で観測された長周期成分を含んでいることが期待さ
目指して、ライニングと鋼板の劣化・腐食状態に関
れる地震動の観測記録を収集し、波形描画、スペク
する各種非破壊計測により得た測定値と防食性の観
トルの計算、震源分布等の検討によりデータの品質
点から見た劣化・腐食状態との関係を明らかにする
を調べ、解析に使用できるデータとそうでないもの
研究開発に取り組んでいる。
との選別を行った。
イ 令和3年度の主な研究開発成果
イ 化学物質等の製造・貯蔵工程における火災危険
性の評価方法の研究
(ア)背景・目的
内面ライニングの劣化について、鋼製一重殻地下
タンクにおけるライニング鋼板サンプルを入手し、
その長期使用に伴う特性の変化を詳しく調べた。非
現代社会において、科学技術の発達及び社会環境
破壊計測手法である電気化学インピーダンス(電気
の変化にともなって、膨大な種類の火災危険性を有
の流れにくさ)測定を行った結果、長年油と接触し
する化学物質が製造・使用されている。さらに、化
たライニングでは、電気抵抗が低下することがわか
学物質の火災危険性は取扱い方法によって異なる。
った。電気抵抗の低下は、
防食性の劣化を意味する。
化学物質を取り扱う施設等が、一旦、火災となると
電気抵抗が低下する要因は、ライニング樹脂の深層
多大な人的被害、経済的損失及び環境破壊をもたら
部に油の成分が入り込むことで、樹脂を膨張させる
すことから、
化学物質の火災予防が特に重要である。
現象(膨潤)に起因することが、フーリエ変換赤外
本研究では、化学物質の製造・貯蔵中における火
分光法 ( 分子構造の詳細解析手法 ) により示唆され
災危険性に焦点を当て、取扱い方法に即した火災危
た。膨潤は、機械的性質である硬さとも関連し、そ
険性を評価するための方法を提言することを目的と
の硬さは、超音波の音速(膜内部を音波が伝わる速
する。本研究成果は火災に対する予防・被害軽減対
さ)により、非破壊でインピーダンスよりも比較的
策に役立てることができる。また、火災原因調査に
簡易に評価することができた。
以上の検証に基づき、
おいても化学物質が火災となる温度条件等を検討す
超音波の音速を用いて、ライニングの防食性を現場
ることにより火災原因を特定する手法として有効で
で推定できる実用的方法を提案した。
ある。
(イ)令和3年度の主な研究開発成果
鋼板の腐食量を測定する一般的方法として、超音
波板厚測定法があるが、腐食が進行すればするほ
製造・貯蔵中に反応暴走及び自然発火を起こす化
ど、精度よく腐食量を計測することが難しくなる傾
学物質について、熱量計を用いて得られた発熱挙動
向がある。そこで、腐食が進んだ鋼板について、超
を基に反応暴走及び自然発火による火災危険性に関
音波板厚測定法により計測した腐食量と実際の腐食
する評価方法を開発した。
量との関係を調べることにより、実際の腐食量を精
度よく推定するための計測手順の検討を行った。そ
(6)地下タンクの健全性診断に係る研究開発
の結果、腐食部では、鋼板の表面に接触させる超音
ア 背景・目的
波の送受信センサを回転させながら、腐食形状に依
ガソリンスタンド等で用いられている鋼製一重殻
存する超音波の反射特性を注意深く解析することに
地下タンクで老朽化の進んだものに対しては、腐食
より、実際の腐食量を比較的精度よく推定できるこ
防止のため、内面にガラス繊維強化プラスチックを
とを見いだした。
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消防防災の科学技術の研究・開発
イニングは長期間使用により防食性を損なうおそれ
章章
動予測式(全体的な地震動レベルの予測に関わる部
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施工する(ライニング)事例が増加しているが、ラ
第第
て、①石油タンクサイトに対する経験的長周期地震