令和4年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況(令和5年版 過労死等防止対策白書) (173 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156170.pdf |
出典情報 | 令和5年版 過労死等防止対策白書(10/13)《厚生労働省》 |
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でも同じことが言えるのかを確かめるため、全国のトラックドライバーを対象としてア
ンケートによる横断調査を行いました。その際、脳・心臓疾患だけではなくその発症リ
スク要因となる高血圧症、肥満、脂質異常症、糖尿病の既往歴と労働条件、睡眠条件と
の関連も調べました。1,947
人の男性トラックドライバー
の約2割で肥満と高血圧症の
既往歴がそれぞれあり、特に
高血圧症は夜間早朝勤務を伴
第
う日帰り運転との関連が示さ
れました(図1)
。アンケート
4
章
による横断調査では、既往歴
った量的な指標との関連は見
られず、不規則勤務のような
質的な指標との関連が示され
地場昼間の運行(日勤)に比べて、地場夜間早朝の運行で高血圧症が
多いことを表しています。
第
過労死等の防止のための対策の実施状況
は時間外労働や睡眠時間とい
4
章
図1.高血圧症の既往歴と運行形態の関連
過
労
死
等
の
防
止
の
た
め
の
対
策
の
実
施
状
況
ました(松元ほか、2022)。
令和3年には脳・心臓疾患の労災認定基準の見直しが行われ、労働時間以外の負荷要
因に勤務スケジュールの変更頻度や変更を予測できる程度、終業始業時刻の不規則さ、
夜間に十分な睡眠がとれない程度といった働き方と休み方に関連する内容が評価項目と
して追加されました。トラックドライバーの脳・心臓疾患による労災事案でよく見かけ
るこれらの「問題となる働き方」が、過重労働を判断する指標として初めて明文化され
ました。なお、労働基準法や自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準
告示)では不規則勤務や夜勤・交替制勤務の回数や長さに関する規制はありません。一
方で、脳・心臓疾患による労災事案のみならず健康起因事故防止の観点からも、トラッ
クドライバーの運転前の睡眠不足状態の確認は貨物自動車運送事業輸送安全規則で義務
付けられ、血圧測定は全日本トラック協会で推奨されています。
そこで我々の研究では、勤務スケジュールと睡眠の管理によって血圧のコントロール
が可能であるか検証することにしました。これまでに行った横断調査や少人数を対象と
した短期間の観察調査では、労働時間や拘束時間が勤務ごとに一定しない不規則勤務の
一部分しか見ることができませんでした。そこで実際の乗務や生活の中で、できるだけ
多くの客観的なデータを得るために、非接触型のシートタイプの睡眠計(写真1)
、ポー
タブルの血圧計(写真2)
、トラックに搭載されているタコグラフの記録を使用し、長距
離ドライバー67 人と地場ドライバー60 人の勤務と睡眠の状況を一人につき1か月間観
察し、不規則勤務者の血圧の変化に影響を与える要因と優先すべき対策を明らかにする
ことを試みました(写真3)。
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