令和4年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況(令和5年版 過労死等防止対策白書) (185 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156170.pdf |
出典情報 | 令和5年版 過労死等防止対策白書(10/13)《厚生労働省》 |
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そのためにもその思いを伝えていこうということでした。しかし、実際に依頼を受けて
原稿を書き出すと、当時の娘の辛い様子がよみがえり、母親として助けられなかったこ
とが辛く、悲しみとやり切れない思いで一杯になりました。でも、このように啓発活動
に参加することで私のような思いをする母親をなくしたいと思いました。啓発授業に参
加している生徒は皆さん大切な息子や娘なのです。
高校3年生を前にしてきちっと私の思いが伝えられるか不安もありましたが、生徒の
皆さんを見ると娘のハツラツとしていた学生時代を思い出し、娘の友人達に話しかける
ような感覚で話をしました。
第
感受性豊かで受験前の生徒さんを対象にするため、話す内容も強い衝撃を与えないよ
うに、その中でも将来自分や周囲の人達が労働災害にあわないように一つでも話した内
4
章
容が残ってくれたらと思いまして娘が受けた辛い体験を話しました。
真面目で責任感が強く友人達に慕われていた娘が職場の環境やハラスメントで命を落
第
過労死等の防止のための対策の実施状況
私の一人娘は平成 28 年1月4日に自ら命を絶ちました。
4
としてしまった現実を話しました。
章
娘は職場での悪環境とそれが原因となったうつ病とも闘いながら仕事をして、心をむ
過
労
死
等
の
防
止
の
た
め
の
対
策
の
実
施
状
況
しばみ最後には若くして自ら死を選ぶしか選択肢がないほど、当時の彼女は追い詰めら
れていたのです。これは特別なことではなく誰にでも起こり得る労働災害です。生徒さ
んには衝撃もあったかも知れませんが、今後、社会に出てから被害者にならないように、
また助けられる人になって欲しいとの思いで実際にどのような悪環境でハラスメントが
あったかを具体的に話をしました。すると徐々に生徒さんの表情が変わっていくのがわ
かりました。生徒さんの多くが女性で身近に感じて思いが重なったのだと思います。
特に、その職場で娘になにが実際にあったのか、真実を知りたいと行動したときに娘
の友人がすぐに「過労死 110 番」に連絡を取ってくれて、とても力になって支えてくれ
て今の私がいます。生徒さんには自分や友人が被害にあったなら声を上げてほしいとお
願いしました。
ある弁護士の先生が「親を亡くすことは過去を無くすこと、配偶者を亡くすことは現
在を無くすこと、子供を亡くすことは未来を無くすこと」と話されたことが忘れられま
せん。
親にとっては子供そのものが未来です。未来を奪われる辛さを増やさない社会になっ
てほしい思いで今後も活動を続けていきたいと思います。
(岩城 穣・過労死等防止対策推進全国センター事務局長)
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