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令和4年版厚生労働白書 (139 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/21/dl/zentai.pdf
出典情報 令和4年版厚生労働白書(9/16)《厚生労働省》
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第1部

コラム

社会保障を支える人材の確保

障害福祉分野におけるコミュニケーションロボットと今後の展望
(医療法人社団北水会 北水会記念病院)
の待合室では、児童同士がロボットを取り合

ニケーションロボットが活躍している。児童

うのではなく、譲り合いをしながら、自分の

や家族の診察時の心理的な負担軽減につなげ

兄 弟 姉 妹 に 接 す る よ う に 遊 ぶ 様 子 や、

るともに、職員の業務の効率化や専門人材の

LOVOT に本を読んであげたり、世話をした

不足の解消につなげようとする試みも進めら

りする様子が見られるようになった。児童は

れている。

ロボットを通してコミュニケーションを練習

児童とその家族をリラックスした状態で
診療につなげ、人に出来ないことをロボッ
トで代替したい

児童精神科外来でのコミュニケーションロ

ボットの導入は、外来を担当する熊崎博一医

するとともに、家族も含めて診察前の時間を
リラックスして過ごすことができている。先
日、診察室で熊﨑医師が「とてもいい状態な
ので、診察は本日で終了」と伝えると、子ど
もは「これからもロボットに会いたいし病院
に来たい」と泣き崩れるケースもあった。

師(国立精神・神経医療研究センター)の

一定の効果が出ている一方で、活用上の課

リーダーシップによって行われた。児童精神

題は、ランニングコストも含めた費用面が大

科医療では、児童とその家族とのコミュニ

きいという。導入初期は扱いが繊細で難しい

ケーションを通して児童の心理状態を正しく

ため壊れてしまい、一度の入院(修理のこ

評価して治療につなげることが重要とされ

と)で 2~3 週間かかることもしばしば。ま

る。そのため、医師はかねてから、
「少しで

た、1 回の充電での電池の持続時間(約 45

も診察前の児童や家族の不安を軽減しその家

分)が短いといった課題もあったが、現在で

族をリラックスした状態で、待ち時間から診

は児童もそれらに慣れてうまくロボットと付

療につなげたい」と考えていた。また「医療

き合っているという。

分野におけるロボットとの共生」を研究テー
マに掲げ、「人の代わりをするだけでなく、
人(職員)に出来ないことをロボットで行え
ないか」という考えもあったという。

ロボットとのコミュニケーションは児童
の心の安定や社会性の涵養に効果

2020(令和 2)年 3 月から簡単な会話や

なん ご

2

担い手不足の克服に向けて

長:平澤直之)の児童精神科外来ではコミュ



時間となった。」との声が聴かれる。診察前


茨城県水戸市にある北水会記念病院(院

ロボットの特徴を活かして児童が「自分
らしく相手に伝える」
人(職員)にできないことにロボットを効

果的に活用するためには、ロボットの特徴や
得意なことを理解する必要がある。例えば、
ロボットは「パフォーマンスの質を維持しつ
つ、長時間同じ業務をこなすこと」ができる。

喃語を話すことができ、表情豊かな完全自立

これはヒトにはできないことである。そのた

型のぬいぐるみ型ロボット LOVOT2 体を待

め、ロボットは診療に訪れる児童やその家族

合室に迎え入れた。

を何組でも期限に左右されることなく、和や

ロボットの存在は、児童とその家族の不安

かに迎え入れることができる。また、双方向

を軽減し、前向きなコミュニケーションを促

のコミュニケーションが可能なロボットを使

すなど良い影響を与えている。児童の家族か

えば、医師の声を患者がどこにいても、また

らは、
「診察のある土曜日は子どもが中々起

時には声色を変えて届けることが可能だ。

きてくれなくて大変だった。子どもがこれま

児童とその家族が医師や職員と初対面の場

では病院に行くのを嫌がって車に乗せること

合には、児童が不安を感じることが多い。児

すら大変だった。ロボットに会えるというこ

童本人から診察のための聞き取り等(検査や

とで、受診が楽しみなイベントに変化し、起

予診)を行うのに、大人が行う場合は比較的

床も早くなり、車に乗ってくれるようになっ

委縮しやすく対人緊張を抱きやすい一方で、

た。付き添う家族にとっても受診は楽しみな

かわいらしい顔をしたロボットなら対人緊張

令和 4 年版

厚生労働白書

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