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令和4年版厚生労働白書 (31 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/21/dl/zentai.pdf
出典情報 令和4年版厚生労働白書(9/16)《厚生労働省》
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第1部

主治医チーム制とシフト制による女性小児科医師サポートの取組み
(福岡大学筑紫病院)

「筑紫病院」という。)は福岡市のベッドタウ

できないため、当直免除等の女性小児科医師

ンである筑紫地区に立地しており、小児救急

が勤務しやすい環境の整備を図ることとなっ

を含めた小児医療需要が旺盛な地域である。

た。

小児科医師の過重労働と小児科医師の志望者
不足を改善するため、日本小児科学会が進め
た「小児医療提供体制の改革」 による小児
1)

医療の集約化プランでは、一次・二次医療圏

“ 私達の主治医 ” から “ 私の主治医達 ” へ
の転換を目指す
一部の医師に配慮することに対して不満を

を担当する「地域小児科センター」を 30~

抱く医師もいたが、職場長が医師と個別面談

50 万人に一つ、三次医療圏を担当する小児

や普段からのアナウンスを行い、女性医師に

ICU(集中治療室)
・NICU(新生児特定集中

配慮するのは当然であるという組織文化を形

治療室)を併設する中核病院を 100~300

成していった。また、入院と外来の業務を分

万人に一つ整備するというものだった。筑紫

離することで、医師間の役割分担を図った。

地区は人口およそ 43 万人であり、条件に合

こういった取組みを行い人員体制の充足を

致していたため、筑紫病院では地域小児科セ

図りつつ、先輩の教えである「私達の主治医

ンターを目指すこととした。

から私の主治医達への転換」を合言葉とし

1

社会保障を支える人材を取り巻く状況

を集めているだけでは体制を構築することが



福岡大学筑紫病院(河村彰病院長、以下



コラム

社会保障を支える人材の確保

て、「主治医チーム制」や「シフト制」を採
用することで、より女性小児科医師が休みや
すくなる環境を整えた。医師数を増やすには
周囲の理解が必要であったが、病院長の積極
的な理解が取組みの推進に大きく影響を与え
ている。

「お互い様」
・「自分でなくても回る」をコ
ンセプトに職場文化を変革
一例を挙げてみたい。現在、筑紫病院の部

「当直ができる」、「女性なら独身者」が条
件だった取組前の状況

長職にある医師が他院の病棟医長在職時に、

筑紫病院での取組みは 2007(平成 19)

その研修医の当直を免除していた。その際、

年に端を発するものであるが、取組みを始め

周りの小児科医師には、「その研修医の子ど

る前は、小児科に派遣される医師は「当直が

もが大きくなったら彼女が働いてくれるのだ

できる」、「女性の場合は独身者」が基本であ

から、その時にほかのみんなが休めばよい」

り、当直免除は一人もいないのが既定路線

と言って納得してもらっていた。その後、そ

だったという。

の医長が筑紫病院に赴任し、当時研修医だっ

子どもがいる女性研修医が配属されたため、

日本小児科学会が提言する地域小児科セン

た女性小児科医師も来ることになり、その医

ターになるためには、夜間勤務の翌日の勤務

師が今度は当直を頑張って勤務してくれた。

に配慮するといった小児科医師の過重労働へ

こうした「お互い様」の意識を醸成すること

の配慮が要件となっていた。こうした内容を

で、数年も経つとそれが評判になり、不平を

実現するためには、当時 7 人体制(うち女性

言う医師はいなくなった。

1 人)であった小児科医師を 10~12 人へ増

ワーク・ライフ・バランスの要点は子育て

員し、
「主治医チーム制」や「シフト制」を

のみならず、介護や自身の疾病罹患など「明

取り入れていく必要があった。

日は我が身」というものであり、それをみん

結果として、当直ができる小児科医師だけ

なが理解することがポイントと考えている。

令和 4 年版

厚生労働白書

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