令和4年版厚生労働白書 (98 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/21/dl/zentai.pdf |
出典情報 | 令和4年版厚生労働白書(9/16)《厚生労働省》 |
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ではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地
域コミュニティを育成し、福祉などの地域の公的サービスと協働して助け合いながら暮ら
第
章
2
すことのできる仕組みを構築することを目指している。
ここでは、高齢者が地域交流の中で役割を持ち、自分らしく自由に暮らすことを大切に
されているサービス付き高齢者住宅の事例と、学生が暮らすオランダのユニークなナーシ
担い手不足の克服に向けて
ングホームの例を紹介したい。
コラム
地域の交流の場となる「家」で自分らしく、自由に生ききる
(株式会社シルバーウッド 銀木犀)
サービス付き高齢者向け住宅(以下「サ高
住」という。
)は、2011(平成 23)年の制
銀木犀には少し前の日本の地域社会では「当
度創設から約 10 年が経過し、登録戸数は増
たり前」だった光景が自然と根付いている。
加を続けており、高齢期の居住の場の選択肢
入居者が地域のコミュニティに溶け込み、地
となっている。入居者一人ひとりに寄り添
域の子ども達を見守るなど人々と交流しなが
い、入居者が地域と関わり合いながら自由
ら生きることを大切にしている。
に、自分らしく暮らすことを大切にしてい
る、株式会社シルバーウッド(千葉県浦安
ぎん
市、下河原忠道社長)が運営するサ高住「銀
もくせい
*1
木犀」
のお話を伺った。
地域交流の中で入居者も役割を持つ
「本人ができることを奪わない」介護を実
践
銀木犀では、「自分のことは自分でやる、
職員はそのサポートをする」という理念が共
有されている。駄菓子屋の店番を入居者が担
銀木犀には、駄菓子屋が併設されている。
当するのもこの理念が形となったものだ。職
そこには、放課後の小学生や小さなお子さん
員には入職時に、入居者や御家族には入居前
を抱えたお母さんが、入れ替わり立ち替わり
の見学時に、この理念を伝えている。本人が
やってきては、わいわいしながら、駄菓子を
できることに職員が手を出さない、本人がで
選んでいる。会計をする店番は入居者の2人。
きることを奪わないことで、入居者自身の自
「○○円いただいたから、おつりは○○円。
立支援につながっている。これは放置とは異
間違えないようにしないとね」と2人で声を
なる。職員一人ひとりが、入居者の特性や
かけ合っている。日々を地域の人たちと接し
日々の状態を観察し、科学的視点に基づく知
て過ごすだけでなく、入居者も役割を持つ。
識をベースにしながら、「入居者が今、何を
新型コロナウイルス感染症の流行以前は、
求めているのか」を判断する。管理職が責任
地域のお母さんがお弁当を持って子どもを連
を負いつつも、職員自身の主体性が求められ
れて銀木犀でお昼を食べ、子どもたちは銀木
る職場環境の中で、スキルアップしていく。
犀の “ おじいちゃん ”、“ おばあちゃん ” と遊
こうした銀木犀の介護のあり方への理念や人
んだり、
小学生は放課後に「ぎんもく集合!」
材教育の方法が、高い志を持つ人材を惹きつ
の合い言葉で、銀木犀で宿題をしたり、遊ん
けているという。
だり、1日に 200 人程度が出入りしていた
そうだ。そして、子どもが仲良く遊んでいた
入居者の死期が近い時には、居室に連れて行
き、
「もうすぐなんだよ」と伝え、お別れ会
*1
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(後述)に参加して「死」を学ぶ機会もある。
令和 4 年版
職員と地域が生活の延長としての死を看
取る
銀木犀では、職員が入居者の生活を「面」
サ高住を千葉県に 8 か所、東京都に 2 か所で運営。グループホームも 2 か所運営している。
厚生労働白書