第2部

第2節

現下の政策課題への対応

安心で質の高い医療提供体制の構築

1 質が高く効率的な医療提供体制の構築

我が国の医療提供体制は、国民皆保険制度とフリーアクセスの下で、国民が必要な医療

を受けることができるよう整備が進められ、国民の健康を確保するための重要な基盤と
なっている。
しかし、急速な少子高齢化に伴う疾病構造の多様化、医療技術の進歩、国民の医療に対
する意識の変化等、医療を取り巻く環境が変化する中で、将来を見据え、どのような医療
提供体制を構築するかという中長期的な課題にも取り組む必要がある。また、現在、都道
府県間及び都道府県内の医師の地域的な偏在、及び診療科間の偏在の問題や救急患者の受
入れの問題等に直面しており、これらの問題に対する緊急の対策を講じる必要がある。
さらに、今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大の経験を踏まえて、新興感染症発
生・まん延時における医療提供体制の構築も求められている。

（1）第 8 次医療計画の策定に向けた取組

都道府県は、当該都道府県における医療提供体制の確保を図るために、国の定める基本

方針に即し、地域の実情を踏まえつつ、
「医療計画」を策定している。

（小児救急医療を含む。））及び在宅医療のそれぞれについて、医療資源・医療連携等に関
施策等の策定を行い、その進捗状況等を評価し、見直しを行うことで PDCA サイクルを
推進することとしている。
2021（令和 3）年 6 月より「第 8 次医療計画等に関する検討会」において、
「良質かつ
適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法
律」（令和 3 年法律第 49 号。以下「令和 3 年改正法」という。）により、新たに五事業の 1
つとして追加された新興感染症発生・まん延時における医療を含め、第 8 次医療計画
（2024（令和 6）年度～2029（令和 11）年度）の策定に向けた検討を開始した。2022
（令和 4）年 12 月における同検討会のとりまとめを踏まえ、2023（令和 5）年 3 月 31 日
に医療提供体制の確保に関する基本方針等の改正を行った。第 8 次医療計画を策定する際
には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により浮き彫りとなった地域医療の様々な課

国民が安心できる持続可能な医療・介護の実現

する現状を把握し、課題の抽出、数値目標の設定、医療連携体制の構築のための具体的な

7

章

疾患）
・五事業（救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療

第

医療計画においては、五疾病（がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神

題に対応するとともに、人口構造の変化への対応を図ることとし、第 7 次計画期間中に追
加した「医師確保計画」、「外来医療計画」
（計画期間はいずれも 3 年間）についてもそれ
ぞれのガイドラインに基づき第 8 次医療計画の策定と併せて見直しを行い、その際、二次
医療圏の設定について先行して議論を行うこととしている。
また、新興感染症発生・まん延時における医療を含む五疾病・六事業及び在宅医療につ
いては、各々の施策と解決すべき課題との連関を示すことが重要であり、施策の検討及び
評価の際にはロジックモデル等のツールの活用を検討することとしている。

令和 5 年版

厚生労働白書

289