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令和5年版厚生労働白書 全体版 (72 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/22/index.html
出典情報 令和5年版厚生労働白書-つながり・支え合いのある地域共生社会(8/1)《厚生労働省》
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障害・介護、出産・子育てなど、人生において支援が必要となる典型的な要因を想定し、
第 1 節で見たように、福祉制度については、高齢者、障害者、こどもなどの対象者ごとに、
公的な支援制度が整備され、質量ともに公的支援の充実が図られてきた。



2

(個人や世帯が抱えるリスクは多様化し、複合化した課題や制度の狭間に落ち込んでし
まっている課題が表面化している)

福祉制度の概要と複雑化する課題

その一方で、個人や世帯が抱えるリスクは多様化し、経済的困難のみならず、生きづらさや精
神疾患などの心理的な困難、孤独・孤立の問題、住居確保の問題など、これまで潜在化していた、
あるいは本人や行政も重要な課題として十分に認識してこなかった様々なリスクが顕在化している。
また、高齢の親と未婚の子どもが同居する「8050 問題」や育児と介護のダブルケアなど、
複数の課題が重なり合い、包括的な対応が求められる複合的なニーズも深刻化している。
さらに、ひきこもり状態や社会的孤立など従来の対象者別の制度には合致しにくい課
題、軽度の認知機能の障害や精神障害が疑われ様々な問題を抱えているが公的支援制度の
受給要件を満たさないために行政の支援まで結びつかず制度の狭間に落ち込んでしまって
いる課題への対応も表面化している。
(かつてこれらの課題に対応してきた家族や地域などの機能が弱まることで、課題が顕在
化している)
こうした課題の多くは、かつては、家族によるケアや、地域のつながり、また長期雇用
慣行などによる企業による雇用保障の中で吸収され対応されてきた。我が国の公的な社会
保障制度も、家族、地域、企業を基礎にしつつ、これらによる生活の保障を補完あるいは
代替する機能を果たしてきた。
しかし、第 1 章でみたように、高齢化や未婚率の上昇による核家族や単身世帯の増加に
よって世帯が縮小し、家族が課題に対応する機能は低下している。また、急速な人口減少
や人々の意識の多様化などを背景に地域のつながりは弱まっている。さらに、産業構造が
変化し、終身雇用制度を維持する企業の割合は緩やかに低下する一方で、非正規雇用労働
者は長期的に増加するなど、企業による雇用保障の力も弱まるとともに、会社への帰属意
識の低下により職場での人間関係も希薄化する傾向にある。
複合化した課題や制度の狭間の課題は、従来、その課題を担ってきた家族や、それを回
避するシステムを有してきた企業・地域、そして人々の交流に対する意識といったものの
変化を背景に顕在化したところもあるだろう。
(家族や地域などの変化や新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、孤独・孤
立の課題を抱える方の存在が明らかになった)
同時に、例えば、高齢者の単身世帯が増加することにより、社会的孤立に陥るリスクの
高い方が増えるといったように、家族・企業・地域の機能が変化すること、それ自体によ
り、新たに課題が生じたり、深まったりすることもあると考えられる。制度や事業が対象と
しないような身近な生活課題、例えば、電球の取り替え、ごみ出し、買い物や通院のため
の移動などへの支援の必要性の高まりといった課題も顕在化している。現時点で支援が必
要な状態でなくとも、日常生活におけるちょっとした手助けを求める相手が身近にいないこ

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