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参考資料3 診断基準等のアップデートの概要 (1086 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46002.html
出典情報 厚生科学審議会・社会保障審議会(合同開催) 厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会(第73回 11/26)社会保障審議会小児慢性特定疾病対策部会小児慢性特定疾病対策委員会(第4回 11/26)(合同開催)《厚生労働省》
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293 総排泄腔遺残
○ 概要
1.概要
総排泄腔遺残症は、女児の直腸肛門奇形の特殊型で、尿道、腟、直腸が総排泄腔という共通管に合
流し、共通管のみが会陰部に開口する特殊稀少難治性疾患である。総排泄腔は胎生5~9週にかけて直
腸と尿路に分離する組織であるが、この分離過程が障害され発生する。直腸肛門形成の他に腟形成が必
要で、幼少期に手術された腟は、長期的に狭窄や閉鎖などの問題点が多く、思春期に入ってのブジーや腟
口形成などの治療が必要となる。病型には、variation が多く、適切な治療には各症例の病態理解と経験が
必要である。発生頻度は、出生6~10 万に1人とされ、平成 262014 年の全国調査集計では 466 例が集計
され、最近 30 年間6~10 万出生に1人の発生頻度は約 10 万の出生に1人割合であった発生していた。
2.原因
泌尿生殖隔膜が総排泄腔を直腸と尿路に分離するが、魚類で Wtip (WT-1-interacting protein)を
knock-out すると、腎嚢胞や総排泄腔遺残が発生し、マウスでは、Shh-Wif1-β-catenin 遺伝子カスケードに
異常があると総排泄腔遺残が発生する。しかし、ヒトでの詳細な発生機序は不明である。
3.症状
直腸が総排泄腔に開口するため排便ができない。そのため生下時に横行結腸を用いた人工肛門を造
設する。尿道も総排泄腔に開口するが、総排泄腔を通じで排尿できる場合とできない場合があり、排尿障
害が存在する場合は、間欠的導尿や膀胱皮膚瘻/膀胱瘻の造設が必要となる。また、胎生期から排尿障
害が発生すると水腟症を合併し、胎便が腹腔に漏れ胎便性腹膜炎を合併し、腹腔ドレナージが生直後に必
要となる。腟に関しては、放置すると思春期に月経流出路障害から、子宮・腟留血症が発生するため、早期
に一期的腟形成を行うか、腟の形成が不十分な場合は、思春期に直腸、小腸を用いた代用腟形成を行う。
4.治療法
新生児期は、人工肛門造設する。総排泄腔が3cm 未満の場合、幼児期に一期的腟・肛門形成を行う。
後矢状切開による肛門・腟形成の他に、腟の形成には skin flap を用いた腟形成、TUM(Total urogenital
mobilization)などがある。創排泄腔が3cm 以上の場合は、腟が低形成の場合が多く、空腸や直腸を用いた
代用腟作成を行う。早期に腟形成を行った場合は、腟孔狭窄予防のため継続した腟ブジーが必要である。
5.予後
平成 262014 年の全国統計調査では、腟形成後の長期的問題点として、月経異常例が3割、月経血流
出路障害例狭窄が 41.4%に認められ、そのうち 91.4%が2割であった。急性腹症、65.8%に月経困難症を
呈していた。術後排便機能は比較的良好で、膀胱約 8 割で禁制が保たれ、排尿機能障害例は3割、清潔
間欠自己導尿施行例は2割も 6 割であった良好な自排尿が獲得されている。