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参考資料3 診断基準等のアップデートの概要 (333 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46002.html
出典情報 厚生科学審議会・社会保障審議会(合同開催) 厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会(第73回 11/26)社会保障審議会小児慢性特定疾病対策部会小児慢性特定疾病対策委員会(第4回 11/26)(合同開催)《厚生労働省》
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62 発作性夜間ヘモグロビン尿症
○ 概要
1.概要
発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroximal Nocturnal Hemogrobinuria:paroxysmal nocturnal
hemoglobinuria, PNH)は、PIGA を含む GPI アンカー合成に関わる遺伝子に後天的変異を持った造血幹細
胞がクローン性クロ−ン性に拡大した結果、補体による介在性血管内溶血を主徴とする造血幹細胞疾患で
ある。再生不良性貧血を代表とする造血不全疾患としばしば合併・相互移行する。血栓症は本邦例ではま
れではあるが、PNH に特徴的な合併症である。PNH は、昭和 49(1974)年に溶血性貧血が特定疾患に指
定されたことに伴い、研究対象疾患として取り上げられ、「溶血性貧血調査研究班」(班長 三輪史朗)によ
って組織的な研究が開始された。それから今日に至る 40 年にわたって歴代班長により疫学、病因、病態、
診断、治療、予後など幅広い領域に関する調査研究が重ねられてきた。
診断時(初診時)年齢は、特発性造血障害に関する研究班の共同研究「PNH 患者における臨床病歴と
自然歴の日米比較調査」のデータによると、45.1 歳(range:10~86)であった。診断時年齢分布は、20~60
歳代に多くまんべんなく発症する。欧米例ではヘモグロビン尿、血栓症といった PNH の古典的症状が前面
に出やすいのに対し、アジア例ではむしろ造血不全症状が主体である。
2.原因
PNH 赤血球では、グリコシルホスファチジルイノシトール(glycosyl phosphatidylinositol:GPI)を介して
膜上に結合する数種の蛋白が欠損している。補体制御蛋白もそのような蛋白の1つであり PNH 赤血球で
欠如しており、感染などにより補体が活性化されると、補体の攻撃を受けて溶血が起おきる起きる。この異
常は、GPI の生合成を支配する遺伝子である PIGA 遺伝子などの変異の結果もたらされることが明らかに
された。すなわち、PNH は、造血幹細胞の遣伝子に後天性遺伝子に生じた変異に起因するクローン性疾
患である。
3.症状
補体介在性の血管内溶血とそれに伴うヘモグロビン尿、血栓症、骨髄不全を3大症状とし、その他に
も、腹痛、嚥下障害、男性機能不全などの多彩な症状を示す。診断には、フローサイトメトリーを用いた
PNH 型タイプ血球の検出が必須である。年に1回程度のフォローアップ検査が推奨される。非常に稀な疾
患であり、新規治療薬(エクリズマブ、ラブリズマブ)の適応、妊娠時の管理にあたっては、高度な専門性の
もとに医学管理を行う必要がある。
国際分類では、GPI アンカー型タンパク質の欠損赤血球が検出されれば PNH とされるが、溶血所見
が明らかでない微少 PNH タイプ血球陽性の骨髄不全症(subclinical PNH: PNHsc)は、臨床的 PNH とは
区別する。PNHsc は PNH ではないが、経過観察中に PNH に移行することがある。このため、骨髄不全
患者をみた場合には、高リスク MDS 例を除くすべての例に対して高感度フローサイトメトリーを行い、PNH
タイプ血球の有無を調べる必要がある。