参考資料3 診断基準等のアップデートの概要 (943 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46002.html |
出典情報 | 厚生科学審議会・社会保障審議会(合同開催) 厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会(第73回 11/26)社会保障審議会小児慢性特定疾病対策部会小児慢性特定疾病対策委員会(第4回 11/26)(合同開催)《厚生労働省》 |
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○ 概要
1. 概要
グルコーストランスポーター1欠損症症候群(glucose transporter type 1 deficiency syndrome:GLUT-1
DSGlut1DS あるいは GLUT1DS)は、脳のエネルギー代謝基質であるグルコースが中枢神経系に取り込ま
れないことにより生じる代謝性脳症で、1991 年に De Vivo らにより初めて報告された。血糖は正常値であ
るが髄液糖が低値となることより中枢神経系内の低血糖状態を生じ、様々な中枢神経系機能不全を起こ
す。中でも難治性てんかんや発達遅滞、痙性麻痺、運動失調等の原因となる。GLUT-1DS はケトン食によ
る治療が有効な疾患ある。認知障害や運動異常症(運動失調、痙縮、ジストニアなど)などの慢性神経症
状、及びてんかん性や非てんかん性の発作性症状を呈し、多様な臨床症状の組み合わせによって特徴付
けられる。本症は、ケトン体を脳の代替エネルギー源として供給するケトン食療法が有効であり、早期発
見・治療によりよって予後をが改善する可能性がしうる疾患である。
2. 原因
トランスポーターの異常により、グルコースを脳内に取り込めないことでエネルギー産生が低下し、さまざ
まな脳機能障害をきたす。大多数に SLC2A1 遺伝子(1p34.2)におけるヘテロ接合性の de novo 変異、重症
例では微細欠失を認め、ハプロ不全が発症に関与する。孤発症例が多いが、家族例の報告も散見される。
常染色体優性遺伝が多数である。現在までに欧米を中心に 200 例以上の報告がある。2011 年度のわが国
における全国調査では 57 例確認されている常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性疾患であり、まれに常染色体
潜性遺伝(劣性遺伝)やモザイク変異による家族例もある。
3. 症状
生下時には異常を認めない。てんかん発作は乳児期早期に発症し、オプソクローヌスに疑似した異常眼
球運動発作や無呼吸発作が先行することがある。発作型は全般性強直間代、ミオクロニー、非定型欠神、
定型欠神、脱力、部分発作とさまざまであるが、てんかん発作のない症例も報告されている。また、てんか
ん症候群として早期発症欠神発作てんかん(4歳以下発症)や家族性の欠神発作てんかん、Doose 症候群
の一部においても GLUT-1DS が存在する可能性が指摘されている。神経学的所見として筋緊張低下を認
める。小脳失調、痙性麻痺、ジストニアなどの複合的な運動障害が遅発性に出現する。構語障害は全例に
認め、失調性である。認知障害は、学習障害の程度から重度精神遅滞までさまざまである。社会性があり、
親しみやすい。重症例で後天性小頭症が合併する。運動失調、精神錯乱、嗜眠・傾眠、不全片麻痺、全身
麻痺、睡眠障害、頭痛、嘔吐を発作性に認めることがある。最近、発作性労作誘発性ジスキネジアにおいて
SLC2A1 遺伝子のヘテロ接合性変異が同定されたが、てんかん発症は遅く、髄液糖低値も有意でなく、
GLUT-1DS の典型例とは異なっている。
GLUT-1DS に認める症状は、空腹、運動により増悪し、特に早朝空腹時に強く、食後に改善する。年齢と
ともに改善し、思春期を経て安定してくる。血液検査では、低血糖の不在下に髄液糖表現型スペクトラムは
幅広く、年齢により症状は変化する。重度の表現型(古典型)は、治療抵抗性の乳児期発症てんかん発作、
その後の発達遅滞・知的障害、後天性小頭症、そして運動失調・痙縮・ジストニアなどの組み合わせを伴う