参考資料3 診断基準等のアップデートの概要 (672 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46002.html |
出典情報 | 厚生科学審議会・社会保障審議会(合同開催) 厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会(第73回 11/26)社会保障審議会小児慢性特定疾病対策部会小児慢性特定疾病対策委員会(第4回 11/26)(合同開催)《厚生労働省》 |
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○ 概要
1.概要
限局性に細胞傷害性 T 細胞を主役とした自己免疫性炎症がおこり、通常はてんかん発作で発病する
慢性進行性の疾患である。健常者に何らかの先行感染症やワクチン接種があった後に、あるいは先行感
染なく限局性に細胞傷害性 T 細胞を主役とした自己免疫性炎症が起こり、通常はてんかん発作で発病す
る。発症する。てんかん発作が難治に経過し、次第に片麻痺・知的障害などが出現し、半球性の萎縮が
MRI で明らかとなる。発病年齢は平均 9.0(±10.3)歳だが、成人でも発病しうる。
2.原因
細胞傷害性 T 細胞を主役とした自己免疫性炎症が推測されている。皮質形成異常を合併する症例も
ある。
3.症状
てんかん発作は焦点性発作であり、約半数の症例にみられる持続性部分てんかん(Epilepsia partialis
continua:EPC)が特徴で、I 指や II 指に持続性のミオクローヌスとしてみられることが多いが、顔面や舌に
みられることもある。てんかん発作頻度は徐々に増加し、群発するようになるが、数年の経過で後遺症期
になると、減少する。
脳波では、初期に限局性の徐波が出現、徐々に一側広汎性に広がる。
MRI では初期には FLAIR などで高信号病変が見られることがあり、その後葉脈状の皮質の萎縮が出現
してくることがある。更に経過すると半球性の萎縮となる。
髄液検査では、初期には細胞増多がみられることがあるが、すぐに消退する。髄液中の細胞傷害性 T
細胞の分泌する granzyme B の定量が診断に重要で、グルタミン酸受容体である GluN2B に対する抗体も
参考となる。これらの免疫因子の測定は静岡てんかん・神経医療センターで行っている。
4.治療法
抗てんかん薬、免疫修飾治療(メチルプレドニゾロンパルス、ガンマグロブリン(IVIg)、タクロリムス、血
漿交換など)、てんかん外科治療(機能的半球切除術)、リハビリテーションなどが集学的に行われる。言語
優位半球障害例では機能的半球切除術(半球離断術)は幼児例を除いて行えない場合が多く、免疫修飾
治療と抗てんかん薬治療が主体となる。言語非優位側障害例では、運動麻痺が出現するまでは機能的半
球切除術は行えない場合が多く、免疫修飾治療と抗てんかん薬治療が主体となる。
5.予後
定期的に行うメチルプレドニゾロンパルス治療の、発作が抑制される症例の割合(seizure free rate
((SFR)))は5%、IQ が 80 以上に保たれた症例の割合(R80)は 50%、運動機能が悪化する症例の割合
(rate of motor function aggravation, AR)は 10%である。定期定期的に行う IVIg治療の SFR は0%、R80 は
43%、AR は 62%である。タクロリムス治療の SFR は8%、R80 は 29%、AR は0%である。言語非優位側
障害例の機能的半球切除術の SFR は 71%で、R80 は0%である。このように多くの症例で発作が持続し、
認知機能の低下、運動障害の出現を回避できていない。