参考資料3 診断基準等のアップデートの概要 (987 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46002.html |
出典情報 | 厚生科学審議会・社会保障審議会(合同開催) 厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会(第73回 11/26)社会保障審議会小児慢性特定疾病対策部会小児慢性特定疾病対策委員会(第4回 11/26)(合同開催)《厚生労働省》 |
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○ 概要
1.概要
シトステロール血症は、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)をとる遺伝性脂質代謝異常であり、果物や野菜
に含まれる植物ステロールの一種であるシトステロールの排泄低下により血中又は組織にシトステロール
が蓄積し、黄色腫や早発性冠動脈疾患といった臨床症状を呈する疾患である。
2.原因
シトステロール血症は、ATP 結合カセットトランスポーター(ABC)G5/8 の遺伝子変異が病態形成に関与
する。食物中に含まれるステロール類は、小腸のステロール輸送蛋白 NPC1L1 により吸収される。小腸上
皮内でコレステロールはエステル化されカイロミクロン形成の材料となるが、利用されない植物ステロール
は ABCG5/8 を介して腸管内へと排泄される。本症では ABCG5/8 遺伝子変異に伴う機能異常によって植
物ステロールの排泄が障害され、体内に蓄積する。蓄積した植物ステロール(多くはシトステロール)は皮
膚や腱などの組織に沈着し黄色腫を形成、また血管壁に蓄積して動脈硬化プラークを形成する。
3.症状
皮膚・腱黄色腫、早発性冠動脈疾患を呈する。本症での動脈硬化プラークには植物ステロールの蓄積
が確認されている。異常赤血球、溶血発作、血小板減少、関節炎などがみられることもある。
4.治療法
根治療法はなく、対症療法のみである。
・食事療法として、植物ステロールを多く含む食品(植物性オイル、マーガリン、ナッツ、アボカド、チョコレー
トなど)や貝類を極力避ける。それ以外の野菜・果物は摂取可能である。しかし食事療法による効果が得
られない例も散見される。
・薬物療法としてエゼチミブ(小腸からのステロール吸収蛋白 NPC1L1 受容体の阻害薬)、コレスチミド(陰イ
オン交換樹脂でステロール吸収を抑制する)などがある。
・外科的治療法として、小腸におけるステロール吸収面積を低下させる部分的回腸バイパス手術がある。
・プラズマフェレシスが一部有効との報告もある。
・上記基本治療後(食事療法・薬物療法)を実施しても LDL コレステロール値の低下効果が不十分な場合
にはスタチンの投与を考慮する。
5.予後
早発性冠動脈疾患により生命予後が規定され、不良となることが多い。