参考資料3 診断基準等のアップデートの概要 (1109 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46002.html |
出典情報 | 厚生科学審議会・社会保障審議会(合同開催) 厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会(第73回 11/26)社会保障審議会小児慢性特定疾病対策部会小児慢性特定疾病対策委員会(第4回 11/26)(合同開催)《厚生労働省》 |
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○ 概要
1.概要
遺伝性膵炎とは、遺伝により慢性膵炎が多発する稀な疾病である。遺伝性膵炎の定義として Gross は、
①血縁者に3人以上の膵炎症例を認め、②若年発症、③大量飲酒など慢性膵炎の成因と考えられるもの
が認められず、④2世代以上で患者が発生していることを挙げている。我が国では少子化に伴い明確な家
族歴を得ることが困難なため、厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班の策定した臨床診断基準に
基づき診断される。
2.原因
原因遺伝子変異として、カチオニックトリプシノーゲン(PRSS1)遺伝子変異が約4割、膵分泌性トリプシ
ンインヒビター(SPINK1)遺伝子変異が約3割、その他・不明が約3割とされる。膵炎発症の第一段階は、膵
腺房細胞内でのトリプシノーゲンの異所性活性化である。生体内には異所性のトリプシノーゲン活性化、さ
らに活性化したトリプシンを介する他の消化酵素の活性化による自己消化から膵臓を守るための防御機構
が存在している。PRSS1 遺伝子異常により、トリプシンの活性化・不活性化のアンバランスが生じるとトリプ
シンの持続的活性化が生じ、膵炎を発症すると考えられている。しかしながら、SPINK 遺伝子における最多
の変異(p.N34S 変異)による膵炎発症機序は解明されておらず、また3割の家系では原因遺伝子異常を認
めず、発病機構は明らかではない。
3.症状
発症は 10 歳以下が多く、幼児期より腹痛、悪心、嘔吐、下痢などの急性膵炎様発作を反復し、多くは
慢性膵炎へと進行し、膵外分泌機能不全や糖尿病を高率に合併する。頻回な膵炎発作のための入院や疼
痛コントロールのために内視鏡治療や膵臓手術が必要となる症例も多い。
4.治療法
疼痛のコントロールと、膵内外分泌障害に対する補充療法といった対症療法にとどまり、根治的治療は
ない。
5.予後
一般の慢性膵炎に比べて遺伝性膵炎の発症が幼少時と若く有病期間が長いことや、炎症が反復・持
続し高度となりやすいため、膵外分泌機能不全や糖尿病を高率に合併し、QOL は著しく低下する。さらに遺
伝性膵炎患者の膵癌発症率は一般人口のそれと比べて、約 50 倍から 90 倍と高率である。我が国におけ
るわが国の全国調査においても、遺伝性膵炎 82 家系中 14 家系(17%)における膵癌を認めている累積罹
患率は 50 歳で 7.1%、70 歳で 22.8%であった。