参考資料3 診断基準等のアップデートの概要 (139 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46002.html |
出典情報 | 厚生科学審議会・社会保障審議会(合同開催) 厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会(第73回 11/26)社会保障審議会小児慢性特定疾病対策部会小児慢性特定疾病対策委員会(第4回 11/26)(合同開催)《厚生労働省》 |
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(1)概念
初期には末梢神経と自律神経に高度のアミロイド沈着が起こり、進行期には、心臓、消化管、腎臓も障
害される。主要病像は多発性ニューロパチーと自律神経機能不全である。沈着するアミロイド蛋白質はI
とII型では変異トランスサイレチン、III型は変異アポリポ蛋白AI、IV型では変異ゲルソリンである。また新
たに変異型β2ミクログロブリンもアミロイド原蛋白質として報告されている。
(2)主要事項
①主要症状
(a)感覚障害
左右対称性に、下肢又は上肢末端から始まる。温度覚、痛覚が早く、かつ強く侵され(解離性感覚
障害)、振動覚、位置覚は進行期に侵される。手根管症候群で発症する場合もある。
(b)運動障害
感覚障害より2、3年遅れて出現し、筋萎縮、筋力低下が下肢又は上肢末端から始まる。
(c)自律神経系の障害
1.陰萎(男性)
2.胃腸症状(激しい嘔気・嘔吐発作、ひどい便秘と下痢の交代、不定な腹痛、腹部重圧感)
3.起立性低血圧(立ちくらみ、失神)
4.膀胱障害(排尿障害、尿失禁など)
5.皮膚症状(皮膚栄養障害、発汗異常、難治性潰瘍)
6.心障害(心伝導障害による不整脈、心不全)
②発病は緩徐で、経過は漸次進行性である。
③遺伝様式
常染色体優性(問診のみでは遺伝歴が不明なことがある)
④組織所見
末梢神経、胃・直腸、口唇、皮膚、腹壁脂肪の吸引生検でアミロイド沈着を認める。
(3)参考事項
①発病年齢は通常 20~40歳台であるが、集積地以外の家系は50歳以後の高齢発症である。
②初発症状は四肢末端のしびれと自律神経障害
③感覚障害が体幹に及ぶと、胸腹部に島状の感覚低下領域を認める。
④心障害、腎障害は遅れて出現し、次第に心不全、尿路感染症、尿毒症を合併し、悪液質となる。
⑤瞳孔の不整、対光反射の消失を認めることがある。
⑥硝子体混濁を初発症状とすることがある。
⑦末梢神経、皮膚、胃・直腸などの臓器生検でアミロイド沈着を認める。
⑧検査所見
(a)心電図:伝導障害と心筋障害
(b)心エコー:心筋の肥厚とエコー輝度の増強
(c)Technetium-99m-Pyrophosphate(Tc-99m-PYP)心筋旧病名:家族性アミロイドポリニューロパチー(familial
amyloid polyneuropathy: FAP)
疾患概念
トランスサイレチン(TTR)の遺伝子変異が原因となり、TTR がアミロイドを形成し組織の細胞外へ沈着することで、
神経、心臓、消化管、腎臓、眼など諸臓器の障害を生じる遺伝性疾患である。熊本、長野に大きな患者集積があ
る。常染色体顕性の遺伝性疾患であるが、熊本、長野以外の非集積地から報告されている症例は約半数で家族
歴が明確でない。発症年齢(集積地では 20~40 歳代、非集積地では 50 歳以後)や症候が多様である。各種治
療法(肝移植、TTR 安定化剤、遺伝子治療)の効果は病初期に期待できるため早期診断が重要である。