令和6年版厚生労働白書 全体版 (147 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/23/index.html |
出典情報 | 令和6年版厚生労働白書(8/27)《厚生労働省》 |
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こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に
とがわかる。また平均年齢をみると、機能制
限がない者は 51 歳、ある者は 66 歳となっ
傾向スコアマッチングを用いた検証
表 2 は、機能制限があることを処置とする
被説明変数とする回帰分析を行った結果であ
展に伴って、社会全体における比率はさらに
る*3。説明変数には、年齢や就業状態などの
上昇する可能性が高いことを示唆する。
ほか、抱えている傷病、一般的な健康状態な
表 1:機能制限がある者の特徴
どの情報を用いている。結果をみると、健康
機能制 機能制限あり
限無し
視覚
聴覚
歩行
認知
セルフケア
コミュニ
ケーション
412,767
56,721
19,713
17,548
34,249
21,219
17,441
17,000
87.9%
12.1%
4.2%
3.7%
7.3%
4.5%
3.7%
3.6%
年齢
51.0
66.0
59.0
63.04
68.9
62.0
61.5
55.8
K6
2.6
5.6
5.2
4.2
5.2
6.1
5.3
5.8
性別(男性=1)
49%
46%
48%
48%
41%
46%
45%
50%
学歴(大卒=1)
26%
14%
20%
14%
11%
14%
14%
15%
就業状態(有業=1)
64%
37%
50%
41%
30%
38%
36%
44%
配偶者(有=1)
58%
53%
54%
50%
51%
47%
47%
44%
通院=1
45%
74%
62%
63%
78%
66%
65%
59%
うち精神疾患=1
5%
7%
6%
4%
4%
9%
7%
11%
健康状態不良=1
9%
45%
36%
31%
53%
40%
43%
34%
日常生活の悩み(有=1)
44%
67%
64%
56%
67%
63%
62%
61%
うち相談相手無し=1
6%
8%
9%
7%
6%
8%
6%
9%
健康診断(受診=1)
73%
56%
62%
58%
52%
53%
50%
55%
12%
14%
16%
15%
14%
18%
18%
19%
観測数
全体に対する比率
健康に関する取組
(何もしていない=1)
次に、うつ病・不安の点数(K6、第 1 章
状態や年齢を調整した上でも、機能制限があ
る場合、K6 が有意に高い。また図は、処置
を視覚や聴覚など個別の機能制限とした上
で、同様のモデルを推定した結果である。結
果をみると、特にコミュニケーションや認知
に機能制限を抱えている場合、より K6 が高
いことがわかる。この結果は、傷病の有無な
ど健康状態にかかわらず、機能制限を抱える
人々に対するメンタル面でのケアが重要であ
る可能性を示唆している。
また、回帰モデルにおける他の変数に着目
すると*4、悩みやストレスに関する相談相手
がいない場合や、健康のための取組みを行っ
ていない場合に、K6 は高いことなどがわか
注 20 を参照)を機能制限の有無別にみると、
る。
機能制限のある者は、ない者に比べ 1.5~3.5
表 2:傾向スコアマッチングによる分析結果
ポイントほど高い。また、その他の健康に関
係数
標準誤差
機能制限(有=1)
1.21
0.0351 ***
年齢
-0.03
0.0013 ***
の有病率が高い、②健康状態が不良である比
性別(男性=1)
-0.26
0.0371 ***
率が高い、③日常生活で悩みやストレスがあ
就業状態(仕事有=1)
-0.29
0.0442 ***
配偶者(有=1)
-0.41
0.0359 ***
健康意識:まあ良い
0.90
0.0856 ***
普通
1.62
0.0735 ***
あまりよくない
3.49
0.0794 ***
悪い
6.05
0.0984 ***
悩み・ストレス有 & 相談相手有り
3.14
0.0392 ***
悩み・ストレス有 & 相談相手無し
6.00
0.0810 ***
率が高い、などの傾向がある。さらに、機能
健康診断(受診=1)
-0.14
0.0362 ***
制限の種類別にみると、こうした傾向は、特
健康に関する取組(何もしていない=1)
0.66
その他の傷病
する項目についても確認すると、①精神疾患
る比率が高い、④悩みを相談できる相手がい
ない比率が高い、⑤健康診断の受診率が低
い、⑥健康のための事柄を何もしていない比
に認知とコミュニケーションにおいて顕著で
あることがわかる。
2
こころの健康に関する取組みの現状
は加齢に伴って顕現化しやすく、高齢化の進
章
傾向スコアマッチングを行った上で、K6 を
第
ており、後者の方が 15 歳程高い。機能制限
0.0506 ***
✔
学歴
✔
観測数
64,559
修正R2
0.344
注:***は1%水準で有意にゼロと異なることを示す。
もっとも、年齢などの属性が異なるため、
機能制限の有無がどの程度 K6 の点数に影響
を与えているのかは明らかでない。そこで、
傾向スコアマッチングを用いて属性を調整
分析結果からわかること
厚生労働省では、各種の相談窓口の設置や
し、機能制限が K6 に与える影響を分析す
食生活の改善や運動の重要性に関する情報発
る*2。
信なども含め、健康増進に向けた様々な取組
みを推進しているが、こうした取組みは、身
*2
*3
*4
傾向スコアマッチングの詳細については、例えば高橋将宣『統計的因果推論の理論と実装』
(2022、共立出版)などを参照。
傾向スコアは、表 2 の回帰モデルと同じ共変量を用い、ロジスティック回帰で推定。マッチング方法は最近隣法。バランシ
ングの結果は省略するが、各共変量の標準化平均差の絶対値は 0.1 以下の範囲に収まっている。
処置変数以外については調整を行っていないため、結果の解釈には留意が必要である。
令和 6 年版
厚生労働白書
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