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令和6年版厚生労働白書 全体版 (78 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/23/index.html
出典情報 令和6年版厚生労働白書(8/27)《厚生労働省》
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られるが、早めに治療するほど症状が重くなりにくいといわれている。
統合失調症の原因は、ドーパミンなど脳の神経伝達物質のバランスが崩れて混乱するこ
とが関係しているともいわれているが、現時点では明らかになっていない。

こころの健康を取り巻く環境とその現状

ある程度の遺伝的要因が作用していると推測されており、統合失調症になりやすい要因
をいくつか持っている人が、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚など人生の転機で感
じる緊張などがきっかけとなり、発症するのではないかと考えられている。

(5)PTSD

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)とは、生死に関

わる出来事や性暴力の脅威に直面したあとで、その当時の恐怖に圧倒される記憶が整理さ
れず、そのことが何度も思い出されて、当時に戻ったように感じ続ける病気である。そう
した体験の中で恐怖や悲嘆、絶望などの強い感情に圧倒されたり、逃げられない、何もで
きないといった強い無力感を生じることによって生じる。体験後の心理社会的サポートの
低さが、将来の PTSD 発症と関連する。体験の例としては、対人暴力などの人為被害の他
にも、雇用の現場での生死に関わる業務上の怪我や病気の経験や、自然災害という予期せ
ぬ出来事による家財や親しい人の喪失も要因となりうる。あまりにも強いショックを感じ
たために、その体験を落ち着いて整理することができなくなる。そのため、非常に良く覚
えている部分と覚えていない部分が混じり合ったり、体験したことと感じたこと、考えた
ことの関係が混乱したり、時間的な順序や、因果関係といったつながりも分からなくなる。
このような記憶は、「いつ、どこで、どのように、なぜ」といった枠組みができていな
いため、非常に不安定な状態となっている。そのため、ふとしたことで、あるいは突然
に、記憶が意識のなかに侵入し、フラッシュバックや悪夢を生じる。
トラウマ体験の記憶は断片化していて、その一部を思い出すと、他の色々な断片的なイ
メージが次々に思い出されたり、辛い感情や考えが生じたりする。そのため、あたかも常
に被害が生じているように感じられるので、不安や緊張が消えることがない。時にはこう
した辛さからこころを守るために、現実感がなくなり、ぼんやりとしたり、記憶の一部が
失われてしまうこともある。
どのような人が PTSD になりやすいのかについては、いくつかのことが分かっている。
まず、死の危険を意識するほどの恐怖に直面したかどうかだけでなく、たとえばそうし
た被害の後の社会的サポートの不足や、生活のストレスが大きかった場合には PTSD を
発症しやすいことが知られている。さらに、過去のトラウマ体験や児童期の虐待といった
逆境体験が複数ある人には PTSD のリスクが高くなるといわれる。

コラム

複雑性 PTSD に対する新たな心理療法について
(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)

複雑性 PTSD について
複雑性 PTSDは通常のPTSDに加えて、感

虐待、ドメスティック・バイオレンスなどの持

情調整や対人関係、自己価値に深刻な困難を

続的、反復的な被害から生じることが多い。

生じている精神疾患である。きっかけとなる出

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来事の定義はPTSDと同じであるが、児童期

令和 6 年版

厚生労働白書

複雑性 PTSD は、2018 年に公表された国