令和6年版厚生労働白書 全体版 (21 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/23/index.html |
出典情報 | 令和6年版厚生労働白書(8/27)《厚生労働省》 |
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上述のとおり、こころの健康を保持するためには、可能な限りこころの不調を抱えない
ことが重要である。しかしながら、こころの不調を抱える人の事情は個々に異なってお
り、その人を取り巻く状況も多様であることに留意する必要がある。実際に、精神障害
は、部位や原因によって分類されることが多い身体の病気とは異なり、おもに脳というひ
とつの臓器を対象にしており、原因が分かっていない疾患が多いという特徴がある*2。
こうしたことを前提に、本白書では、精神障害の発病に至る原因の有力な考え方として
「ストレス」に着目し*3、現代社会にみられる様々なストレス要因とその実情等を整理して
いる。
私たちは、自らを取り巻く環境から常に何らかのストレスを受けており、こうしたスト
レスに的確に対応しながら、社会に順応して生きているといえる。しかし、ひとたび反応
がうまくいかなくなると、心身のバランスが崩れ、社会への適応が難しくなってくる。こ
ころの不調はこうしたことに起因して起こりうると考えられる。
そもそもストレスとは、外部から刺激を受けた時に生じる緊張状態のことであり、物理
的、環境的な要因や、心理的、社会的な要因などがあるとされる。
こうしたストレスは、ライフステージの全般にわたり存在している。たとえば、進学や
就職、結婚や出産、介護や死別など、人生における変化を伴う出来事である「ライフイベ
ント」もそのひとつである*4。また、そうした大きな節目となる出来事だけでなく、たと
えば、人間関係のトラブルや長時間労働など、ライフステージにも関連しながら日常生活
のなかで経験しうる出来事もある。さらには、いじめや配偶者からの暴力(DV)など、
社会において容認できない暴力等への遭遇も、こころの健康に対する深刻なリスクといえ
る。
このように、本白書では、ストレス要因を、ライフイベント、日常生活のなかで経験し
うる出来事、そして社会において容認できないリスクに大別しながら考察しているが、取
り上げている各ストレス要因については、今日の我が国が直面している本格的な少子高齢
化・人口減少時代という大きな変革期において重要性を増している子育てや介護などのラ
イフイベントや、急速なデジタル化、これらに伴う孤独・孤立の深刻化などの現代社会の
特徴的側面、さらに、近年、社会的関心の高まりがみられるトピックなどを、こころの健
康という観点から、現代社会のストレスの多様さを映し出すものとして取り上げたもので
あり、統計的に把握されたこころの不調の主要因として取り上げるものではないことにご
留意いただきたい。
*2
*3
*4
こころの病気を知る(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「こころの情報サイト」)参照。
たとえば精神障害の労災認定基準では、対象疾病の発病に至る原因の考え方について、環境由来の心理的負荷(ストレス)と、個体側の
反応性、脆弱性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まり、心理的負荷が非常に強ければ、個体側の脆弱性が小さくても精神的破
綻が起こるし、逆に脆弱性が大きければ、心理的負荷が小さくても破綻が生ずるとする「ストレス-脆弱性理論」に依拠している。
ライフイベントによるストレスの客観的評価を行う手法として、米国の心理学者の Holmes らによる「社会的再適応評価尺度」がある。
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厚生労働白書
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