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令和6年版厚生労働白書 全体版 (36 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/23/index.html
出典情報 令和6年版厚生労働白書(8/27)《厚生労働省》
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らの変化を経験しながら、豊かな収穫を得ていく時期である。一方で、身体には老化がみ
られ、健康問題も大きくなっていく。高齢期は、
「喪失」に関連した様々なストレスを感
じやすいとされており、この時期のライフイベントには、退職、子の独立、住み慣れた家

こころの健康を取り巻く環境とその現状

からの転居(施設入所など)、死別など、様々な喪失体験にも直面しやすいことに留意が
必要である。
また、先述のとおり、要介護者等のいる世帯の構成割合をみると、単独世帯の構成割合
が大きく増加している実情から、もともと認知機能や心身の機能が低下しがちな高齢者
が、孤独や生活の不活発により更なる機能低下を経験するおそれも懸念される。生活不活
発病*15 といわれる様々な症状の出現のなかには、気持ちの落ち込みなどのうつ症状も指
摘されており、こころの健康の観点からも留意が必要である。


高齢者のこころの特徴

(高齢者のこころの変化に対する理解が十分でないと、ストレスの要因にもなる)
高齢者のこころの特徴として、たとえば、論理的に考えていくよりも「印象」

「直感」
によって判断することが多くなっていくことが挙げられる。加えて、流動性知識(反応の
速さ、問題処理能力など)は衰えやすい半面、結晶性知識(知識や理念)は保たれやすい
ことから、理詰めの説明よりも、エピソードを交えたイメージの湧きやすい説明の方が理
解しやすいとされている。また、コミュニケーションの流暢さが低下し、話題の寄り道・
脱線が増える「迂遠」と呼ばれる状態になりやすく、本人にとっては「言葉が喉まで出か
かって出ない」といった形で体験される。
こうした変化に対する本人や周囲の人の理解が十分でないと、一見、大きなライフイベ
ントのない穏やかな日常生活を送っていても、思わぬストレスを溜め込んでしまう要因に
もなりかねず、留意が必要である。

2 働く環境

ここまで、ライフステージごとのストレス要因についてみてきたが、本項では、壮年

期・中年期における重要なライフイベントである「就業」とこころの健康についてみてい
く。
上述したとおり、こころの健康は、
「人生のストレスに対処しながら、自らの能力を発
揮し、よく学び、よく働き、コミュニティにも貢献できるような、精神的に満たされた状
態」であり、壮年期・中年期においては、
「働きがい」と「働きやすさ」が実現できる職
場環境は、こころの健康を高め、支える観点からも重要であるといえる。
働きがいを示す指標の一つであるワーク・エンゲイジメント*16 と就業環境や雇用管理
に関する分析によると、「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」

「労働時間の
短縮や働き方の柔軟化」
、「業務遂行に伴う裁量権の拡大」

「いわゆる正社員と限定正社員
との間での相互転換の柔軟化」
、「仕事と病気治療との両立支援」

「育児・介護・病気治療
等により離職された方への復職支援」といった雇用管理の実施率の高さとワーク・エンゲ
* 15 生活不活発病は、身体を動かす機会が減ることで全身のあらゆる機能が低下し、様々な症状が出現することをいう。廃用症候群と
もいう。
* 16 オランダ・ユトレヒト大学の Schaufeli 教授らによって、2002 年に確立された概念であり、仕事に関連するポジティブで充実した
心理状態として、「仕事から活力を得ていきいきとしている」
(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」
(熱意)、
「仕事に熱心に取り
組んでいる」
(没頭)の 3 つが揃った状態として定義される。

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令和 6 年版

厚生労働白書