令和6年版厚生労働白書 全体版 (168 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/23/index.html |
出典情報 | 令和6年版厚生労働白書(8/27)《厚生労働省》 |
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前章でみたように、孤独・孤立対策の実施に当たっては、
「予防」の観点から施策を推
進することとしているが、実際に、孤独・孤立の予防がこころの健康保持にも有効である
ことが研究からも分かってきた。
国立長寿医療研究センターが行った調査*7 によると、地域組織(ボランティア、町内
会、学習・教養サークルなど)への参加種類数と、高齢者のうつの発症リスクには関係が
あり、参加する組織の種類が多い人ほど発症リスクは少なく、5 種類以上参加している人
第
章
3
では、参加していない人に比べ、24〜26%発症率が低いことが分かった(詳しくはコラ
ム「高齢者の社会参加とうつ病に関する研究」を参照)
。
こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に
また、本人が参加しているか否かにかかわらず、暮らしているまち(おおむね校区)の
高齢者がスポーツやボランティアなどに参加している割合が高いほど、うつ症状の人が少
ないことも分かった。これは、より多くの高齢者が社会参加できるまちづくりが、うつの
発症予防にもつながる可能性があることを示唆している。
この点については、高齢者に限られないとも考えられる。第 1 章第 4 節でみたように、
こころの健康に関する人々の意識調査から、同居の家族がいない単身者にとって、趣味や
社会活動等における友人や知人との「つながり」が、こころの健康によい影響を与えてい
る可能性が示唆された。暮らしの場において、幅広い世代の参加が可能な地域組織の育成
を進めることは、単身者のこころの不調の予防にも寄与しうるものといえるだろう。
(地方公共団体において地域の実情に応じた孤独・孤立対策が推進されるよう後押しする)
政府では、地方公共団体を対象として、地域の実情に応じた官・民・NPO 等の関係者
間の連携・協働体制の構築や孤独・孤立対策の推進等に係る支援事業(図表 3-2-3)を行
うほか、NPO 法人や社会福祉法人等非営利団体を対象として、日常生活環境での緩やか
なつながりや居場所づくりに関する先駆的な取組みに係るモデル調査事業を行い、事業の
結果を全国に共有してきた。
こうした取組みなどを通じ、地域の実情に応じた官民連携・協働体制が構築され、孤
独・孤立対策が推進されるよう後押ししているところであり、各地において、孤独・孤立
の問題が複雑化・深刻化する前に対応する、孤独・孤立状態の予防の観点から取組みが進
み、人と人の「つながり」を実感できる居場所や地域づくりが行われることが、地域の
人々のこころの健康を維持・向上していく観点からも期待される。
*7
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令和 6 年版
宮澤拓人、井手一茂、渡邉良太他「高齢者が参加する地域組織の種類・頻度・数とうつ発症の関連- JAGES2013-2016 縦断研究」
(
「総
合リハビリテーション」789-798 2021 年 49 巻 8 号)
厚生労働白書