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令和6年版厚生労働白書 全体版 (188 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/23/index.html
出典情報 令和6年版厚生労働白書(8/27)《厚生労働省》
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おわりに
誰もがこころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会の実現に向けて、私
たちに必要なことは何か。本白書では、そのような問題意識のもと、こころの健康につい
て様々な角度から論じてきた。
「はじめに」でも触れたように、こころの健康は人間の健康を支える土台であり、その
維持・向上は、社会環境の質の向上そのものである。社会とは人の集合であり、社会の変
容は、その社会を構成する一人ひとりの変容によってしか起こりえないとすると、社会環
境の質の向上は、一人ひとりの意識改革と行動変容にかかっているともいえる。
どのような意識を持ち、行動すればよいのか。ストレスには心理的、社会的要因があ
り、対人関係や社会との関係に起因するストレスは誰もが経験しうることについて取り上
げた。社会の一員として、こころの健康と社会とのつながりについて理解を深め、自らの
こころの健康とともに、隣人のこころの健康にも留意しつつ社会生活を営むことが、「私
たちに必要なこと」のひとつといえよう。
また、ライフイベントを始めとする様々なストレス要因に対応した施策や、こころの不
調を抱える人を支える取組みについてもみてきた。そのなかで、
「精神障害にも対応した
地域包括ケアシステム」が目指す姿から、こころの健康に関する取組みにおける、自己決
定や当事者の参加の重要性について確認した。共生社会の実現に向け、こころの不調を抱
える人々の自己決定を支え、その幅を広げていく取組みを推し進めることもまた、
「私た
ちに必要なこと」といえよう。
本白書の冒頭でみたように、こころの不調がない人ほどこころの健康の水準が高い場合
が多いことは言うまでもない。しかし、こころの不調がない人であっても、こころの健康
の水準が低い場合もありうる(WHO2022 報告書に基づき整理した概念図(4 頁)の左
下の領域)

これは、こころの不調は抱えていないものの、精神的に満たされてもいない状態ともい
え、日常生活のなかで自己の能力が十分に発揮できてない、やりがいや充実感などが十分
に得られていないといった思いとも重なりうるだろう。その背景は決して一様ではない
が、たとえば、本白書で取り上げた性別役割分業意識もそのひとつであるように、一人ひ
とりが、個性と多様性を尊重され、家庭で、地域で、職場で、能力を発揮でき、生きがい
を感じることができる社会への道程には、未だ多くの課題が残されている。こうした課題
と向き合うことは、私たちの社会を構成するあらゆる人々の自己決定を支え、その幅を広
げていくことともいいうるものである。
本白書で取り上げた施策は、必ずしもこころの健康を主眼に置いたものばかりではな
い。しかし、これらは皆、こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会の
実現に不可欠であり、こころの健康に関する施策の多面性や、施策相互の有機的連携の可
能性に対する示唆でもある。
本白書の「はじめに」で引用した WHO 憲章の「健康」に関する一文には、次のよう
な続きがある。
“The enjoyment of the highest attainable standard of health is one of the
fundamental rights of every human being without distinction of race, religion,

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