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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (104 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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いこと 56)、また推奨量以上の摂取により、他の健康指標に対し有益な影響を得られるという根拠が乏
しいこと 57)が報告されていることから、上限のないたんぱく質の摂取が健康増進に有益な効果をもた
らすわけではない点には注意が必要である。

3-3 生活習慣病等の発症予防
3-3-1 生活習慣病及びフレイルとの関連
たんぱく質の摂取不足が影響する可能性が高いと考えられる疾患に、高齢者におけるフレイル
(frailty)及びサルコペニア(sarcopenia)がある。これまでに報告されている習慣的なたんぱく質摂
取量とフレイルの発症率又は罹患率との関連を検討した観察疫学研究(横断研究及びコホート研究)
のメタ・アナリシスにおける結果は一致していない 58,59)。一方で、高齢者を対象に、習慣的なたんぱ
く質摂取量とサルコペニアの罹患率との関連を検討した横断研究のメタ・アナリシスでは、サルコペ
ニアのある群が、サルコペニアのない群に比べて、たんぱく質摂取量が有意に少なかったことを報告
している 60)。たんぱく質は、他の栄養素に比べ個人間の摂取量の差が比較的小さいため、「量」を評
価した研究が策定根拠として重要である。しかし、これらのメタ・アナリシスに含まれている文献の
たんぱく質摂取量の評価方法は一貫しておらず、食事記録法や 24 時間思い出し法等、摂取した栄養
素の「量」を評価できる方法を用いた研究と、集団の中で相対的に習慣的な摂取量が多いか否かを評
価できるものの、「量」を特定するには至らない食物摂取頻度調査票を用いた研究が混在している。
そのため、これらの結果のみで、たんぱく質摂取量とフレイル及びサルコペニアとの関連を評価する
ことは難しい。
摂取した栄養素の「量」を評価できる方法を用いた研究に着目すると、台湾の高齢者を対象として、
たんぱく質摂取量とフレイルの罹患率との関連を検討した横断研究では、フレイルを有する者(男性:
1.11 g/kg 体重/日、女性:0.9 g/kg 体重/日)と比較して、フレイルでない者(男性:1.34 g/kg 体重/日、
女性:1.26 g/kg 体重/日)のたんぱく質摂取量が多かった 61)。一方で、ブラジル人高齢者(女性が 8 割
を占める)を対象として、たんぱく質摂取量とフレイルの罹患率との関連を検討した横断研究では、
フレイルの有無の違いでたんぱく質摂取量に違いはなかった 62)。結果が一致しない要因の 1 つとし
て、ブラジル人を対象とした研究では、集団の平均たんぱく質摂取量が多い(1.5 g/kg 体重/日以上)
ため、たんぱく質摂取量以外の要因が影響した可能性がある。フレイル及びサルコペニアの判定基準
には、たんぱく質が直接的に影響する可能性がある体重減少、握力、筋量、歩行速度と、たんぱく質
が間接的に影響する可能性がある身体活動の低下 57)、さらにはたんぱく質以外の要因が大きく関連す
る可能性が高い疲労感といった項目が含まれるため、上記のように結果が一致しない可能性がある
(フレイルやサルコペニアの判定基準については、『2 対象特性、2-3 高齢者』を参照されたい。)。
たんぱく質が直接的に大きく影響するとともに、サルコペニアの診断基準項目の 1 つである筋量に
着目した、70 歳以上の高齢者男性を対象にした 10 週間の無作為化比較試験では、たんぱく質推奨量
(0.8 g/kg 体重/日)を摂取する群では四肢筋量が減少した一方で、推奨量の 2 倍量(1.6 g/ kg 体重/日)
を摂取する群では、四肢筋量が維持されたことが報告されている 63)。また、過体重又は肥満の高齢者
を対象に実施した無作為化比較試験では、通常たんぱく質摂取群(0.8 g/kg 体重/日)と高たんぱく質
摂取群(1.4 g/kg 体重/日)の両者ともに体重が減少した中で、高たんぱく質摂取群の方が四肢筋量の
減少量が有意に少なかったことが報告されている 64)。
これらを踏まえると、現段階ではたんぱく質摂取量とフレイル及びサルコペニアの罹患率やそれら
の判定に含まれる項目を評価した研究の質・量ともに十分ではないため、フレイル及びサルコペニア

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