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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (418 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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の過体重の女性高血圧患者を対象にして 1,500~2,000 kcal/日から 450 kcal/日に摂取エネルギーを減ら
して 2 週間経過を見た介入研究では、必ずしも全ての対象者で降圧を認めず、血圧低下の程度と関連
したのは体重減少の程度であった 32)。また近年、高度肥満に対して実施される肥満外科手術(胃バイ
パス手術等)による体重減量でも、血圧の低下や脳心血管病リスクの低下が確認されている 33,34)。以
上のように、肥満自体が高血圧の重要な発症要因と考えられており、その対策は高血圧の発症予防、
改善、重症化予防において重要である 2)。
また、体重減量が高血圧を改善することについては、介入試験による報告も多い。高齢高血圧患者
を対象とした TONE 研究 6)では、肥満者は 4.7 kg の減量によって、降圧薬を中止後の心血管合併症発
症、血圧再上昇、降圧薬再開の複合エンドポイントが約 30%改善した。なお、この研究のサブ解析 7)
では、3.6 kg を超える減量を達成できれば有意な血圧低下効果が期待できるとした。このほか、介入
試験のメタ・アナリシスでは、約 4 kg の減量により、収縮期で-4.5 mmHg、拡張期で-3.2 mmHg の
血圧降下があると報告されている 35)。「高血圧治療ガイドライン 2019」1)では、肥満者は BMI で 25
kg/m2 未満を目指して減量し、非肥満者はこの BMI のレベルを維持すべきとしている。また、急激な
減量は有害事象を来す可能性があり、4 kg 程度の減量でも降圧効果があることから、長期計画のもと
に無理のない減量を行うべきとしている。さらに、皮下脂肪及び内臓脂肪の増加は血圧や代謝リスク
に関連するが、内臓脂肪でより高い 36)。よって、ウエスト周囲長(男性 85 cm 未満、女性 90 cm 未
満)37)も考慮して減量を行うべきであるとしている。

2-3 アルコール
アルコール摂取による血圧への影響は、短期効果と長期効果で異なる。介入試験のメタ・アナリシ
スでは、低用量アルコール摂取(純アルコール 14 g 未満)は血圧に影響しなかった。一方、高用量ア
ルコール(純アルコール>30 g)は、6 時間以内に血圧を 3.5/1.9 mmHg 低下させたが、13 時間以上経
過後の血圧を 3.7/2.4 mmHg 上昇させたとしている 38)。一方、多くの疫学研究では、習慣的飲酒量が
多くなればなるほど、血圧値及び高血圧の頻度が高く、経年的な血圧上昇も大きいことが示されてい
る 39–41)。コホート研究のメタ・アナリシスは、収縮期血圧と飲酒量との関係はほぼ直線的であり、そ
の関係に閾値を認めないことを示した 42)。
また、アルコール制限による降圧効果が報告されている。我が国の介入試験では、飲酒習慣のある
軽症高血圧患者の飲酒量をエタノール換算で平均 56 mL/日から 26 mL/日に減じると、収縮期血圧の
有意な低下が認められた 43)。介入試験のメタ・アナリシスでもアルコール制限の降圧効果が示されて
おり、その効果は用量依存的であった 44)。「高血圧治療ガイドライン 2019」1)では、高血圧者の飲酒
は、エタノールで男性 20~30 mL/日以下、女性 10~20 mL/日以下にすべきであるとされている。この
アルコール摂取量の目標値は、先述の我が国の介入試験の報告 43)に近い値であり、海外のガイドライ
ンでも同様である 45)。エタノールで 20~30 mL はおおよそ日本酒 1 合、ビール中瓶 1 本、焼酎半合
弱、ウイスキーダブル 1 杯、ワイン 2 杯弱に相当する。
少量から中等量の飲酒により冠動脈疾患リスクが低下することが、国内外において報告されてい
る 46–48)。しかし、循環器疾患リスクが最も低いのは飲酒習慣のない者であり、少量のアルコール量で
も血圧上昇及び循環器疾患のリスクを高めるとの報告もある 49)。さらに、飲酒量が増加するほど脳卒
中、特に脳出血のリスクが上昇することも報告されている 48,50,51)。脳卒中の多い日本人では、高血圧
予防の意味でも、飲酒をしない者には少量の飲酒を勧めるべきではない。

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