「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (461 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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の目標体重の上限は BMI<25 kg/m2 にするのが妥当と考えられるが、年齢やメタボリックシンドロー
ムの有無などで設定範囲が変わる可能性がある。一方、BMI の下限値については、BMI が 18.4~20.3
kg/m2 の日本人 CKD 患者群(年齢:51~73 歳)では末期腎不全の移行前に死亡するリスクが高かっ
た 20)ことから、BMI≧20.0 kg/m2 が望ましいと考えられる。
2-1-3 各国のガイドラインにおける CKD 患者のエネルギー摂取量
「慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版」では、全てのステージにおいて、エネルギー摂取
量は 25~35 kcal/kg 標準体重/日に設定されている 6)。
同様に、2020 年の NKF
(National Kidney Foundation)
KDOQI(Kidney Disease Outcomes Quality Initiative)ガイドラインでも、安定した CKD 患者は 25~35
kcal/kg/日を範囲内としている 21)。一方、欧州臨床栄養代謝学会は、安定した CKD 患者の目標量は 35
kcal/kg/日 22)、これまでのガイドラインを総括した報告では 30~35 kcal/kg/日を推奨量としている 23)。
しかしながら、35 kcal/kg 標準体重/日以上のエネルギー摂取は、糖尿病や肥満を悪化させる懸念が
ある。さらに、標準的なたんぱく質制限である 0.6~0.8 g/kg 標準体重/日のたんぱく質制限下では、35
kcal/kg 標準体重/日のエネルギー量で十分と考えられている 6)。また、実際のエネルギー摂取量と
Harris-Benedict 式から推定した安静時エネルギー消費量の比(相対エネルギー比)で見ると、CKD 患
者では BMI と関係なく、相対エネルギー比が高いほど総死亡リスクが上昇しており、特に糖類から
のエネルギー摂取比率が高いと予後が悪い 24)。以上より、糖尿病や肥満を有する CKD 患者では、「慢
性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版」が推奨する 25~35 kcal/kg 標準体重/日が妥当と考えられ
る。
一方、日本の地域在住高齢者では、最も身体的フレイルの合併頻度が少ないエネルギー消費量は男
性で 2,400~2,600 kcal/日、女性で 1,900~2,000 kcal/日であり、標準体重(BMI=22 kg/m2)当たりでは
40 kcal/kg/日と報告されている 25)。本研究では CKD の有無は検討されていないが、糖尿病や肥満がな
く日常生活活動度の高い高齢者 CKD では、フレイル予防のためには、エネルギー摂取量の目標値が
35~40 kcal/kg 標準体重/日となる可能性がある。
2-2 ナトリウム(食塩)
「エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2023」では、CKD 患者において 1 日 6 g 未満の食塩
摂取制限が推奨されている 1)。これは心血管イベント、末期腎不全、死亡といったハードエンドポイ
ントの改善を目的とするのではなく、これらに大きな影響を与えると考えられる血圧、尿蛋白量及び
微量アルブミン尿への効果を期待するものである 1)。介入研究のシステマティック・レビューでは、
糖尿病性腎臓病の血圧に対しても同等の内容が示されており、糖尿病の有無にかかわらず血圧管理の
ための食塩摂取制限の血圧に対する効果が示されている 26)。アメリカの 14 年間の追跡研究では、30%
以上の eGFR 低下が見られた症例数は、食塩摂取量 2.8~4.3 g/日以下の群と比べ、5.8 g/日以上摂取し
ている群で有意に多かったと報告されている 27)。また、CKD 患者を対象として 4 年以上観察した研
究では、末期腎不全に陥るリスクは、食塩摂取量が 7 g/日以下の群に比べ、7~14 g/日の群では 1.4 倍、
14 g/日以上の群では 3.3 倍と有意に高かった 28)。CKD 患者を対象にした食塩制限がその他のアウト
カムに与える効果に関する報告は少ないが、7 g/日以下の食塩摂取量では、アンジオテンシン受容体
拮抗薬の効果を増強し、心血管イベントも軽減するという報告がある 29)。これらの研究から、食塩制
限の eGFR 保持効果や心血管イベントの予防効果が示唆される。
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