「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (230 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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ビタミンCを 1 日当たり 10 mg 程度摂取していれば欠乏症(壊血病)は発症しない 139)。しかし、
臨床症状の発現には様々な要素が関連するために、臨床症状に基づいて推定平均必要量を設定するの
は困難である。そこで、ビタミンCの栄養状態を反映する生体指標に基づいて、推定平均必要量を設
定することにした。
ビタミンCの栄養状態を反映する生体指標として、血漿アスコルビン酸濃度、白血球アスコルビン
酸濃度、尿中アスコルビン酸排泄量がある。これらのうち、血漿アスコルビン酸濃度はビタミンCの
体内含量を反映する有用性の高い指標とされている 140)。血漿アスコルビン酸濃度とビタミンCの栄
養状態との関係、血漿アスコルビン酸濃度とビタミンC摂取量との関係が調べられているため、血漿
アスコルビン酸濃度とビタミンC摂取量との関係を有用な指標として用いることができる。そこで、
血漿アスコルビン酸濃度に基づき、適正なビタミンCの栄養状態を維持できる摂取量として推定平均
必要量を設定した。
3 健康の保持・増進
3-1 欠乏の回避
3-1-1 必要量を決めるために考慮すべき事項
血漿アスコルビン酸濃度が 11 µmol/L 以下になると壊血病の症状が現れ 139)、23 µmol/L 以下で疲労
や倦怠感などの軽度の症状が現れる 140,141)。このことから,23~28 µmol/L 以下もしくは 30 µmol/L 以
下が不足とされている 142,143)。50 µmol/L 程度に達すると尿中アスコルビン酸排泄量が認められ 144)、
体内飽和に近い状態になる 140)。そして、70 µmol/L 程度でほぼ最大値に達する 136,137,145)。ビタミンC
の摂取量が増えていくと、血漿アスコルビン酸濃度はシグモイド状に増加し、血漿濃度 30~60 µmol/L
の範囲で直線的に増加する 136,137,145)。
以上より、血漿アスコルビン酸濃度を 30 µmol/L 以上に維持できるビタミンCの摂取により、不足
を回避することができると考えられる。多くの観察研究、介入研究によって血漿アスコルビン酸濃度
とビタミンC摂取量との関係が調べられているが、30 µmol/L 前後の血漿アスコルビン酸濃度を期待
できる摂取量は研究によって大きく異なる 136,137,141,144–148)。また、同一研究であっても、血漿アスコル
ビン酸濃度の平均値が 10 µmol/L 程度および 50 µmol/L 程度である人の集団(すなわち、ビタミンC
が明らかに不足、あるいは充足している集団)ではビタミンC摂取量が同等である際の血漿アスコル
ビン酸濃度の個人間のばらつきが小さいのに対し、血漿アスコルビン酸濃度の平均値が 30 µmol/L 前
後である人の集団では、ビタミンC摂取量が同等であっても血漿アスコルビン酸濃度に大きなばらつ
きが認められる 136,146)。このため、血漿アスコルビン酸濃度を 30 µmol/L に維持できる摂取量を精度
高く設定することは容易ではない。一方、血漿アスコルビン酸濃度が体内飽和に近い状態であれば、
体内のビタミンCの栄養状態は確実に適正であると考えられる。そこで、およそ半数の対象者がこの
濃度に達するビタミンCの摂取量の平均値をもって推定平均必要量とすることにした。このように、
良好なビタミンCの栄養状態を維持できる摂取量は、ビタミンCの欠乏症である壊血病の回避に求め
られる最小摂取量よりもかなり大きな値である。
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